伝統を未来に紡ぐ 博多織の老舗「西村織物」がショールーム

ショールームを案内する西村社長(左)

 博多織の老舗織元「西村織物」が福岡県筑紫野市紫の本社内にある工場の一部を改装し、ショールーム「ORIBA」をオープンした。同社は2023年6月に福岡市中心部に開業した高級ホテル「ザ・リッツ・カールトン福岡」の内装に博多織を提供するなど、伝統の技を生かしながら新たな取り組みを続けている。

高級ホテルの内装に

 西村織物は幕末期の1861年創業で、現存する最古の博多織の織元。かつては力士の化粧まわしなどを織っていたことで知られる。落語会とのつながりも深く、帯「鬼献上」は現在でも多くの落語家が愛用している。

 16年に6代目の西村聡一郎社長(46)が就任。伝統工芸の枠にとどまらず、他業種との交流にも積極的に取り組んできた。


ザ・リッツ・カールトン福岡の内装に使われている西村織物の博多織


 ザ・リッツ・カールトン福岡には博多織800メートルを納入。プレミアムスイートの壁などに用いられており、バーでは天井付近からつるされた間仕切りが利用客を迎える。日本料理店の個室に設置された装飾は「あの博多織を見たい」と言って予約する人もいるという。


日本料理店の個室の装飾(左)と、客室の引き戸に用いられていえる博多織


 西村織物に依頼があったのは、新型コロナウイルスの感染が拡大していた20年のこと。通常、博多織には絹糸が用いられているが、今回は軽さが求められる内装のため、素材から見直した。デザインについても難航したが、古くから残してきた伝統的な柄を見せたところ、海外の担当者を納得させることができたという。西村社長は「コロナで売り上げが落ちた時期だったが、新たな挑戦が実を結んだ」と振り返る。

「可能性を広げたい」

 また23年は、博多織工業組合が太宰府天満宮に奉納した5メートルの「御旗」も手がけた。祭典の際に掲げられている。

 ショールームは工場の資料室に使っていた場所に設置し、広さは約150平方メートル。設計は、世界的に著名な建築家・隈研吾氏に師事した神谷修平氏が手がけた。

 内向きに大きなガラス窓が設けられており、機械が音をたてながら動く中、職人が行き交い、織物が完成していく様子を目の前で見ることができる。


ザ・リッツ・カールトン福岡に納入した博多織などを紹介するコーナー


 ザ・リッツ・カールトン福岡で使用されている博多織のレプリカなどを展示しているほか、様々な商品が並ぶコーナーもある。ショールームを見学した愛知県碧南市の呉服店「山口屋」の山口日出子社長(65)は「制作の現場が近いことに驚いた。伝統美を堪能できました」と話す。


 西村社長は「照明にもこだわり、臨場感のある環境で見てもらえるように工夫しました。先端的なチャレンジの場として活用し、これからも織物の可能性を広げていきたい」と語る。

 見学は事前予約制で、午前10時から午後5時まで。原則として日祝日、第2・第4土曜は休み。問い合わせは、西村織物(092-922-7128)へ。


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