【熊本】野生イルカの実態は? 天草市が24年ぶり調査中

通詞島周辺で見られるイルカ


 イルカウォッチングが盛んな熊本県天草市五和町の通詞島沖で、市が野生のイルカの実態を調査している。生息数や分布水域などを把握し、今後の保護活動や教育プログラムの構築、観光事業に役立てる。合併前の五和町が実施して以来、24年ぶりで、2006年の新市誕生後は初めて。

 通詞島沖の早崎瀬戸には野生のミナミハンドウイルカが生息する。個体数は150~200頭とされ、イルカウォッチングはスタートから四半世紀を超える天草観光の目玉となった。入り込み客数(推計)は開始当初は2万~4万人台で推移し、13、15年は10万人を超え、新型コロナウイルス禍前の19年は約8万6000人が楽しんだ。

 調査は天草漁協に委託し、5月から始めた。船上からの個体識別調査や、陸からの定点観測などで情報を集めてデータベース化する。大学と連携してイルカ研究の成果を収集し、今後の環境対策や調査を支援することも視野に入れている。市は今年度一般会計当初予算に972万円を計上した。

 漁協で調査を担当する高崎ひろみさんを中心に、▽定点観測▽船上調査▽遭遇率の聞き取り――を行っている。

 定点観測では通詞島周辺の海域を三つのエリアに分け、定時に週3回、陸地から双眼鏡で生息場所を確認し、データを収集する。船上調査は5~10月に計30回を予定し、背びれなどをカメラに収めて個体を識別する。遭遇率の聞き取りは、イルカウォッチング業者らと協力して行う。

 市市民環境課は「イルカに関する情報を蓄積、公開することで海域の環境保全や教育推進、観光促進などにつなげたい」とする。高崎さんは「年間を通して見られる通詞島周辺の生態系は世界的にも貴重。イルカを通して海の環境を考えるきっかけにしてほしい」と話す。基礎調査の様子や結果などは、「天草イルカ調査室」と名づけてSNSでも発信する。


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