【熊本】被災の旅館「しらさぎ荘」2月中旬プレ開業 人吉

 九州豪雨で被災した熊本県人吉市の旅館「しらさぎ荘」の再建工事が完了し、2月中旬にプレオープンする。日帰り温泉として利用できるようになり、1月22日は無料で招待された地域住民らが大浴場で憩いの湯を楽しんだ。4月7日に宿泊を含めた本格再開を目指す。

再建終え お披露目


招待した地域住民を見送る高山さん(左から2人目)

 「この日を迎えられて感無量。再建に向けて無我夢中だった」。建て替え工事が完了した新築の旅館で22日、地域住民を迎えた若女将(おかみ)の高山多磨さんは語った。

 しらさぎ荘は1913年にコイやウナギの養魚場として創業し、料亭や温泉を経て、旅館となった。湧水池もあり、約300匹のコイが鑑賞できた。

 2020年7月の豪雨では、木造一部2階の旅館が2階まで浸水し、高山さんや宿泊客らは屋根に逃げ、ボートで救出された。建物は全壊し、泉源も被害を受け、コイもほとんどいなくなった。

 「再建する気持ちが折れかかっていた」という高山さんに、全国から「再開してほしい」といった手紙やメールが寄せられた。背中を押され、再建に取り組みながら、日中はJR人吉駅前の仮設商店街でテイクアウト用の弁当や総菜を販売した。鶏の唐揚げやうなぎのかば焼きが人気だったという。

人吉・球磨産木材を使用

 旅館の工事は昨年2月に着工し、1月に完了した。2階建てで、水害対策として、大浴場や家族風呂がある1階は鉄筋コンクリートとした。5室ある客室やフロント、食事室がある2階は利用客が親しみを持てるように木造とし、人吉・球磨産の木材を使用した。


再建した大浴場の湯を楽しむ招待客

 被害を受けた泉源は、再び掘削すると、従来の泉質とほぼ同じ湯が湧いた。大浴場の床には「球磨川とともに生きる」との意味合いで仕入れた球磨川の石を使った。ガラス張りで、旅館自慢の池を見渡すことができる。

 22日は町内会の住民や再建に関わった球磨工高の生徒たちを無料で招待した。豪雨で木造2階の自宅が被災した住民(75)は、「よく来ていた近くの温泉が再建してうれしく、安心します。元気づけられる」と笑顔を見せた。

 高山さんは「しらさぎ荘を待っているお客さまの声に応えたい一心。憩いの場となってくれればうれしい」とほほ笑んだ。


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