【宮崎】高千穂鉄道の資料館がオープン 巨大ジオラマも

 台風で壊滅的な被害を受け、2008年に全線廃止となった高千穂鉄道の歴史や沿線の文化を伝える「高千穂鉄道記念資料館」が12月24日、宮崎県高千穂町の高千穂駅構内にオープンした。

「高千穂あまてらす鉄道」が倉庫を改装


ジオラマ模型やパネル写真が並ぶ館内(12月22日)

 同町に残る線路で観光用カートを運行している「高千穂あまてらす鉄道」が、駅構内の倉庫を改装して整備した。高千穂線の風景が再現されたジオラマ模型は畳6枚分の大きさがあり、列車が山あいの鉄橋やトンネルを走る様子を間近に見ることができる。また、国鉄時代や第3セクター時代に撮影されたパネル写真約70点を展示。資料館横の車両庫見学や列車内での記念撮影もできる。

 22日に内覧会があり、高山文彦社長は「資料館を拠点に、鉄道と沿線に描かれてきた歴史や文化を多くの人に知っていただくよう努力したい」と話した。

 ジオラマの列車は午前10時半、午後0時半、2時半から各30分間走行する。入館料は大人1000円、小中学生600円、未就学児300円。1歳未満無料。開館は午前9時25分~午後4時(最終入館は午後3時半)。毎月第3木曜休館。問い合わせは、あまてらす鉄道(0982-72-3216)へ。

「人とのふれあい教わった」

高千穂あまてらす鉄道専務 斉藤拓由さん

 高千穂鉄道の運転士だった30歳の時に鉄道の被災を経験した高千穂あまてらす鉄道専務の斉藤拓由(ひろよし)さん(49)は、全線廃止から15年の節目に開設された資料館を特別な思いで見つめている。


斉藤さん


 2005年9月、「鉄橋が流された」と連絡を受け、翌日、川水流(かわずる)駅へ向かった。駅舎は泥水にまみれ、五ヶ瀬川を渡る2本の鉄橋が流されていた。仲間と泥だらけになった書類を片付けていると、誰かが「もう見たくない。帰ろう」と声を絞り出した。


 20歳で高千穂鉄道に入社し、翌年に運転士になった。乗客とは顔なじみで、お年寄りから黒あめやミカン、ゆがいたタケノコをもらい、時には高校生から悩みを打ち明けられた。「人とのふれあいを教えてもらい、育ててもらいました」と振り返る。


高千穂鉄道の存続を求め、住民らと県庁を訪れ、当時の東国原知事に陳情書を提出した時の斉藤さん(中央右から2人目。2007年4月、高千穂あまてらす鉄道提供)

 被災後、高千穂鉄道は第3セクターでの経営を断念し、翌06年1月末に斉藤さんら社員約30人は解雇された。当時、2人目の子どもが誕生したばかりだったが、沿線の住民らと鉄道の存続を求める運動に参加。アルバイトで何とかしのぎながら、県庁で当時の東国原知事に全線存続を求める陳情書を提出したこともある。だが復活はかなわず、08年12月28日に廃線が決定した。

甘木鉄道を経て

 その後は第3セクター甘木鉄道(福岡県)で運転士を務めた。高山文彦社長の誘いであまてらす鉄道に入社したのは6年前のことだ。

 全線復旧を目指し、まずは線路を少しずつでも復活させることが、沿線の多くの人への恩返しになると考えている。「高千穂線の、のどかな地域性が好きでした。資料館を通じてそういう雰囲気を感じてもらいたい」と話した。


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