スマホ依存で「学校に行けない」 今すぐできる対策を九州大の専門医に聞いた

 いじめ、不登校、さらにスマホ依存といった子どもの「こころ」をめぐる問題。特にこの1年あまりは新型コロナウイルスの影響で、子どもたちの生活リズムは大きく変わりました。NPO法人「九州大学こころとそだちの相談室(通称:こだち)」理事長として、子どもや家族の悩みに向き合う黒木俊秀・九州大学教授に話を聞きました。


黒木俊秀さん

精神科医。九州大学 人間環境学研究院 臨床心理学講座教授。大学病院や民間の医療機関など精神科医として多くの医療現場を経て、2013年から現職。臨床心理士や公認心理師の養成に取り組み、NPO法人「九州大学こころとそだちの相談室」(福岡市早良区)の理事長も務めている。


advertisement

子どもが安心できる時間を

 福岡市早良区西新にある「こだち」は有料のカウンセリングルーム。臨床心理士のほか、2017年に国家資格となった公認心理師の資格を持つ心理臨床の専門家が多角的な視点で、来訪者の心理的サポートをしています。子どもから大人まで様々な人が相談にやって来ます。


NPO法人「九州大学こころとそだちの相談室」のウェブサイト

――「こだち」にはどんな相談が寄せられますか。

 お子さんの不登校の相談は多いですね。ご家族からは「すぐ学校に行けるようにしてほしい」と求められますが、それはケース・バイ・ケースです。学校でも家でもない場所で、安心できる時間を提供したいと思っていますので、そのあたりをご家族にまず理解していただくことが大事になってきます。

 もちろん、ご家族は苦労されていますし、特にお母さんは子どもと他の家族の板挟みになりやすいですから、それぞれの気持ちに配慮しながら解決法を考えていくのが私たちの仕事です。

――福岡で不登校が増えていると感じますか。

 特に大きな変化はないけれど、糸島市や福岡市の西区、東区などで若い世帯がどんどん増えている地区がありますよね。それに伴って学校も新設され、不登校の子どもの数も増えているようには感じます。


オンラインで取材に応じる黒木教授

――不登校の相談にはどんなケースが?

 朝になっても布団から出てこない。起きてもきつそうで、お腹や頭が痛いと身体の不調も訴える。昼を過ぎるとちょっと軽くなって、夕方にはおしゃべりもするし笑顔も出てくる。家族は大丈夫だろうと思うし、本人も「明日は学校に行く」って言うけれど、翌朝になるとやっぱり動けない。朝10時、11時頃になってやっと起きてくるという例は多いですね。

現代病?スマホ依存の増加

――理由に挙げられることはなんでしょうか。

 "スマホ依存"が増えましたね。22時以降は親がスマートフォンを預かるっていうルールを多くの家庭で決めてはいるけど、それが継続できない。いったん許すと、そこから修正するのが難しくなり、スマホを預かろうとすると、子どもが「スマホがないと生きていけない!」って言い出したりする。

 明け方までずっと動画を見たりゲームをしたりするから、当然、朝起きてこられない。そんな感じで昼夜が逆転している子どもが多いですね。


――どのようにサポートしていくのでしょう?

 今の時代、「スマホはだめっ!」と絶対に使わせないというわけにもいきません。オンラインのコミュニティーも知っていないと、学校での会話についていけませんよね。若い人たちはインターネット上でいろんな情報を得て、生活しているでしょう。なくてはならないけれど、付き合い方が難しい。親自身も子どもが夢中になっているスマホのコンテンツをまずはよく知る必要があります。

 家庭の中でルールづくりができるといいんですけど、それぞれの家庭の文化や伝統みたいなものもあります。日本がまだ豊かな時代は良かったんですが、「経済的余裕がない」「頼る人がいない」「明日の生活もままならない」という家庭もたくさんあります。子どもの心を丁寧に扱うだけでは、なかなかうまくいかなくなりました。

 僕らだけではどうにもならないことは、行政や保健医療・福祉施設と連携をとって、社会資源を総動員して支援していく必要がありますね。


advertisement

今日からできる対策は?

――家庭でできる工夫はありますか。

 休みが続いたり、コロナで外出できないとなると、家で過ごす時間が長くなりますね。そうすると、睡眠と覚醒のリズムが乱れてきます。昼近くまで寝ていると、連休明けは特にきつい。脳の中ではまだ眠っている時間なのに、いきなり「起きろ!」って言われても対応できないでしょう。

 長い休みの後半はなるべく、平日通りの睡眠と覚醒のリズムを保つことが大事ですね。子どもだけでなく、保護者も一緒に取り組んでみるといいですね。

――ご自身が心がけていることは?

 現代は、自分らしい「ネット人生」を見いだすことが大切ですかね。最初はネットの世界がおもしろいけど、だんだん飽きて嫌な思いをすることもあります。そこで整理をして、本当に好きなものだけに絞ると、その人らしいネットの使い方ができてくるのかなと思います。"インターネットを組み入れたライフスタイル"を確立するのが新しい生き方にもなりつつある気がします。

相談窓口で解決の糸口を!

 文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果(2019年度)」によると、福岡県は人口1000人あたりの不登校者数が小学校、中学校、高校のいずれも全国10位内に入っています。


文部科学省「令和元年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果 」より

 福岡県は、電話やメールで悩みの相談にのる窓口を設けており、24時間対応の相談室もあります。判断に迷ったり、ひとりでは解決が難しい状況になったりしたら、専門家の助言から解決の糸口が見つかるかもしれません。

福岡県の相談窓口
いじめ、不登校など教育全般
こころの健康など


advertisement

この記事をシェアする

  • テアトルアカデミー
  • 読売旅行 行くばい!よか旅
  • 読売新聞 購読の申し込み
  • 西部読売育英奨学会 よみいく
  • ささっとーも読める読売新聞オンラインアプリのご紹介