福岡の「ドラゴン桜」 小論文の熱血指導で国公立大の扉を開く福岡女子商の若き校長

小論文の指導に力を注ぐ柴山さん

記事 INDEX

  • 国公立大合格者がゼロから20人に
  • ノートから芽生える学びへの意欲
  • 31歳校長「日本一の商業高校に」

 東大合格を目指して奮闘する高校生らの姿を描いた「ドラゴン桜」。ドラマでも注目される仰天ストーリーを地で行くような高校が福岡県那珂川市にあります。私立福岡女子商業高校。赴任1年目で国公立大の合格者をゼロから20人に増やし、この春から校長に大抜擢された柴山翔太さん(31)に指導方法や教育への思いを聞きました。


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国公立大合格者がゼロから20人に

 柴山さんは2019年度までの2年間、私立神戸星城高(兵庫県)で勤務。商業高では全国屈指の進学実績を上げる同校で、推薦入試の小論文指導を担当しました。


私学に移行して5年目に入った福岡女子商高

 一方、福岡女子商高は1950年に県立高校の分校として発足し、のちに旧那珂川町立となりました。定員割れや財政難などから2017年4月、学校法人八洲(やしま)学園(横浜市)が運営する私立校として新たなスタートを切りました。

 卒業生の多くは地元に就職し、4年制大学に進む生徒は少数。進学者を増やしたいと考えていた当時の柴田晴夫校長は昨春、柴山さんを国語科教員として迎えました。
 


希望者に小論文を指導する進学講座

 柴山さんは赴任後、進学説明会などを行って大学受験の希望者を募りました。6月から始めた放課後の進学講座には、30人ほどの生徒が集まりました。

 講座では、過去問を題材に「IoT」「ディープラーニング」「雇用の流動化」といったキーワードを生徒と議論しながら解説していきます。

 生徒は講座の後、小論文を書いて提出。柴山さんが添削して返すというやり取りを重ね、要約のコツや文章のまとめ方を身につけていきます。講座の頻度も徐々に増やし、生徒たちは半年の間にそれぞれ60本ほどの小論文を書き上げました。

 2018年度に1人、19年度は0人だった国公立大合格者が、20年度は長崎大、佐賀大、北九州市立大など20人に増えました。「生徒が本当にがんばってくれて、想像以上の結果が出ました」と柴山さんは振り返ります。


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ノートから芽生える学びへの意欲

 講座を受ける生徒たちが取り組むのが「小論文ノート」です。過去問などで、知らない言葉があれば新聞などで調べ、テーマごとにその意味や派生する用語をまとめていきます。


学習に打ち込んだ跡が残る小論文ノート

 わからないことは自分で調べ、考え、整理する。「生徒はノートを作るうちに、それがどんどん面白くなっていきます。それぞれに得意分野ができ、互いのノートを見比べて学び合うようになります」

 静岡大に合格した生徒のノートを見せてもらうと、「サテライトオフィス」「リーマンショック」「フードロス」「地方創生」など多岐にわたるテーマが並び、関連するスクラップや書き込みでびっしり埋められていました。


校長室で取材に応じる柴山さん

 「最初のうちは、おっかなびっくり小論文を見せに来ていた生徒も、中盤以降は『こんなのはどうですか』と挑んでくるようになります。そうなると合格は近い」と柴山さんは語ります。


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31歳校長「日本一の商業高校に」

 自身を支えてくれた柴田校長が今春で退くと知り、留任を求めて八洲学園の理事長に直談判した柴山さん。その熱意に「そこまで言うなら自分でやってはどうか」と校長就任を促され、覚悟を決めたといいます。


「日本一の商業高校をつくりたい」

 現在も、希望者が50人を超えた進学講座の指導を続けるかたわら、学校経営に関わる会計の勉強などに取り組んでいます。今年度からは、女性経営者を招いて「起業家教育」の講座も始めました。

 「商業高校で学んだ女性はビジネスの世界に求められています。生徒たちが日々わくわくしながら学べる日本一の商業高校をつくりたい」

 「ドラゴン桜」の放送は欠かさず観て、教室でも勧めているという柴山さん。生徒たちとともに、31歳の若き校長の挑戦は続きます。


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