時代を超えて20回に 高校生の思いを紡ぐ全国川柳コンクール
記事 INDEX
- 恋愛や社会の出来事
- 福大の周年事業から
- 国語の授業でも挑戦
福岡大学(福岡市)が企画する「全国高校生川柳コンクール」が、今年で20回を迎える。毎年全国の高校生1万人以上から寄せられ、紡いだ五七五からは、その時の社会情勢に影響されながら、家族や友人らとの日々に向き合う生徒たちの姿が垣間見える。授業で題材にする学校もあり、川柳を通して自分たちを見つめ直す機会にもつながっている。
恋愛や社会の出来事
「テストにも 三分欲しい ロスタイム」「手紙書く メールじゃ出ない ゴミの山」「お弁当 開けて伝わる 母寝坊」――。これまでに延べ約20万人から計約34万作品が寄せられた。テーマは、学校生活のほか、家族や友人との関わり、恋愛などが中心で、時代に関係なく高校生ならではの体験として共感できる題材が多い。
また、題材は同じでも、時代の変遷で詠まれる景色は変わる。同じような恋愛模様を詠んだと思われる作品でも、第1回では「携帯を 何度も見かえす 1人の夜」と当時の携帯電話「ガラケー」を握りしめる様子が思い浮かぶ。一方、第15回では「既読待つ 時間はドキドキ 止まらない」となり、LINEといったSNSに連絡手段が代わったことが読み取れる。
社会の出来事も多く登場する。2011年に東日本大震災が発生して節電要請が出た際は、「夏のエコ 一つの部屋に 顔並ぶ」。20年からの新型コロナウイルス禍では「手をのばし 重なる影で つなぐふり」「先生の 話もマスクも よくズレる」など。ほかにも、ロシアのウクライナ侵略や成人年齢の引き下げといったものも並ぶ。
第1回から選考委員を務める全日本川柳協会常任幹事の梅崎流青さん(78)は「合格の 番号写メって 母見舞う」(第4回大賞)を例に挙げ、「高校生の作品は、時代の先端に触れながらも、そこには上手に詠もうといったたくらみがない、ストレートな思いがあふれている」と分析している。
福大の周年事業から
コンクールは、福岡大が05年、大学の周年事業の一環として始めた。選考委員には専門家のほか、学長や教員、学生も参加。大賞、優秀賞に加え、それぞれの選考委員が選ぶ特別賞も用意されている。
開始当初、「高校生川柳コンクール」としていたが、全国から続々と作品が集まり、年々応募数は増加。第5回から名前に「全国」を付けることに。1人3作品応募できた頃は、全国270校の約1万7900人から計約4万3500作品が集まった。
19年から1人1作品に変更したが、それでも昨年は全国484校から計約1万5000作品もの応募があった。
国語の授業でも挑戦
コンクールがきっかけで、川柳を授業や行事に取り入れるところも出ている。
福岡県立小倉商高(北九州市小倉南区)では、2年前から国語の授業で川柳を学ぶ。1年生のクラスで7月中旬に行われた授業では、川柳と俳句、短歌の違いを学び、川柳を作った。
友達と意見を交わしながら作った生徒(16)は「いつもと違った友達の思いや考えを知ることができた。LINEなどで友達とでもできそう」と笑顔だった。
国語科主任の山崎理一教諭(62)は「川柳を考えることを通して、自分自身や家族、友人との日常を振り返るきっかけにもなっている」と話す。
■ 9月15日まで募集
コンクールの応募は専用のフォームから、9月15日まで。受賞作の発表は12月に行われる予定。サイトでは、過去の入賞作品も閲覧可能。問い合わせはコンクール事務局の福岡大広報課(092-871-6631)へ。