小倉祇園太鼓を長崎で奉納 北九州市立大「平和の駅運動プロジェクト」

記事 INDEX

  • 天下泰平の願い
  • SDGs賞を受賞
  • 「思いを一つに」

 76年前、長崎を焼け野原にした原爆の当初の投下目標だった小倉。現在、その地で学ぶ北九州市立大の学生が、伝統芸能「小倉祇園太鼓」を長崎で奉納する取り組みを続けています。昨夏はコロナ禍で中止となりましたが、8月中旬に予定している2年ぶりの訪問に向け、学生たちは練習に励んでいます。 


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天下泰平の願い


2019年の奉納の様子(提供:平和の駅運動プロジェクト)

 太鼓の奉納は、北九州市立大の教授だった中島俊介さんが、市の平和祈念式典で「若者の参加が減った」という声を聞いたことをきっかけに2010年に始めました。中島さんが退いた今は、大学の地域共生教育センターの「平和の駅運動プロジェクト」として受け継がれています。


自転車リレーの様子(提供:平和の駅運動プロジェクト)

 毎年夏、福岡県八女市星野村にともる被爆地の残り火「平和の火」から採火して、小倉から長崎までの道のりを自転車でリレー。長崎市の平和祈念像前で太鼓を演奏します。現在6人いるメンバーの1人、弓場理史さんは「小倉祇園太鼓の音には、天下泰平の願いが込められています。音楽の力で平和を発信していこうというのが、この取り組みです」と説明します。


原爆の残り火(提供:平和の駅運動プロジェクト)

<平和の火>
 星野村(現・八女市)出身の山本達雄さん(2004年に88歳で死去)が、広島原爆で亡くなった叔父の形見として地下壕(ごう)にくすぶっていた残り火を持ち帰り、自宅で守り続けた。1968年に星野村が引き継いだ。


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SDGs賞を受賞

 太鼓奉納にとどまらず、メンバーは1年を通じて様々な平和活動を行っています。7月13日には、北筑高校(北九州市八幡西区)で模擬授業を実施。1年生約30人とともに、「私たちにとっての平和」とは何か、そして「平和のためにできること」を考え、グループごとに発表してもらいました。


北筑高校で行った模擬授業

 西小倉小(北九州市小倉北区)でも毎年、6年生に平和に関する授業を行っています。長崎を訪れる際は、原爆によって多くの犠牲者が出た城山小に、西小倉小の児童らが折った千羽鶴を届けるそうです。こうした取り組みが評価され、プロジェクトは昨年、北九州市などが主催する「SDGs未来都市アワード」でSDGs賞を受けました。

 リーダーの田中小晴さんは「どうしたら、よりよい活動ができるかをいつも考えながらやってきました。みんなの努力が評価されたのはうれしいです」と話します。指導する地域共生教育センターの石川敬之・副センター長も「平和の大切さを伝える、ということが脈々と受け継がれていく。大変いい循環です」と目を細めます。

「思いを一つに」

 一方、大学ではコロナ禍によるオンライン講義が続き、プロジェクトに参加する学生は減少。例年通りの活動は難しく、継続が危ぶまれた時期もあったといいます。

 それでも、何ができるかを考え、学生や地域住民ら100人以上に「平和とは何か」を問うインタビューを敢行。その様子を動画にまとめ、Youtubeで公開するなどしてきました。


太鼓の練習に打ち込む田中さん

 今夏の長崎訪問では、自転車リレーは見送る予定ですが、大学の太鼓サークルの協力も得ながら月4回ほどの練習を重ね、8月12日の奉納に備えています。

 「平和への思いは人それぞれ。それを一つにつないで長崎に届ける気持ちで活動していきたい」と田中さん。初めて太鼓を奉納する弓場さんも「太鼓を奉納することで、すぐ平和になるわけではありません。でも、祈ることを続けていたら平和は実現すると思います。気持ちを込めて太鼓を叩きたい」と話しています。


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