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日に日に秋が深まり、山の木々も色づく季節。行楽日和に誘われ、福岡県篠栗町にある南蔵院へ参拝へ向かいました。日本三大新四国霊場のひとつに数えられる篠栗四国霊場の総本寺で、高野山真言宗の別格本山でもある南蔵院。林覚乗住職が宝くじで1等の前後賞を当てたことでも知られ、「パワースポット」としても人気があります。
境内は見どころいっぱい
JR博多駅から福北ゆたか線で25分。城戸南蔵院前駅で下車し、5分ほど歩くと、南蔵院の入り口に到着しました。
大黒様が迎える階段を上り、本堂でお参りをしたあと、案内に従って東に進みます。山麓一帯が境内となっている南蔵院ですが、手すりのある階段やスロープでバリアフリー化され、お年寄りや小さな子どもも楽しめるように配慮されています。
歩いていくと、「大不動明王」や「妙見堂と大黒堂」「三鈷の松」といった見どころが次々と現れます。順路に沿って、釈迦涅槃(ねはん)像へと向かいます。
階段を上ると、横たわったお釈迦様の大きな螺髪(らほつ)が見えてきました。
心静かに参拝を
南蔵院は長年、ミャンマーやネパールの子どもたちに医薬品や文房具などを届けており、その返礼に1988年、ミャンマー国仏教会議から仏舎利の贈呈を受けました。仏舎利を安置し、参拝者の心のよりどころとなる場所を設けようと、1992年に釈迦涅槃像の建立が始まります。
3年をかけて1995年5月に完成した涅槃像は、全長41メートル、高さ11メートル、重さは300トンあり、ブロンズ製では世界一の大きさです。
正面に立つとその大きさに圧倒されます。「涅槃」は本来、仏教における理想の境地で、お釈迦様が亡くなる際の姿ですが、表情は穏やかで昼寝をしているようにも見えます。親しみを込めて「篠栗のねぼとけさん」と呼ぶ人もいるそうです。
コロナ禍の前は、年間約100万人が訪れていた南蔵院。林住職によると、外国人観光客のマナー違反や迷惑行為に悩まされることもあったとのことです。露出の多い服装で参拝したり、仏像と肩を組んで記念写真に納まったり。境内で音楽を流して踊る人や、シートを広げて宴会を始める団体も見られたといいます。
「南蔵院は観光地ではありません。納骨堂があり、誰にも言えない思いや願いを抱えて仏様に手を合わせる方も来られます」。そう促しても耳を貸さず、注意を受けたことに腹を立てた人とトラブルになる場面も少なくありませんでした。
「心を静かに自分と向き合う時間を大事にしてほしい」と願う林住職。一人でも多くの参拝者を受け入れたいと思う一方で、落ち着きを取り戻した現在の状況がこのまま続けば――と考えることもあるそうです。
開運は「実践力」から
林住職は涅槃像の完成から間もない1995年6月、宝くじの1等前後賞で1億3000万円を当てた強運の持ち主でもあります。そのご利益にあやかろうと仏様に手を合わせるのは欲深いようで気が引けるのですが、「大丈夫。人間、欲がなければ行動できませんから」と笑顔です。
宝くじで幸運を引き寄せる"コツ"は「当たった時の使い道をどうするか」にあるようです。「両親を温泉に誘う、お世話になっている方にお土産を買う、どこかに寄付をするとかね、自分のためではなく、社会への還元を考える。心の中にやさしさを持つことです」。住職は宝くじを購入する際、いつ、誰のために使うかを細かく書き記していました。
日常の勤めに加え、各地での法話や講演会、寄付活動、さらには「自然を感じて、極楽浄土にいるような穏やかな時間を過ごしてほしい」と、南蔵院の一帯を樹木や花でいっぱいにする植栽活動も進めています。
「口にするだけ、願うだけでは思いは叶(かな)いません。人に喜ばれることを実践していきたいですね」と穏やかな表情で話していました。