風が奏でる夏の音色 篠栗町・山王寺の「風鈴まつり」で咲く笑顔

山王寺の風鈴まつりを楽しむ女性たち

記事 INDEX

  • 願い事を短冊に
  • シャボン玉舞う
  • 別名「タヌキ寺」

 お遍路で知られる福岡県篠栗町の山王寺(さんのうじ)で、「風鈴まつり」が開かれている。風鈴をつるしたトンネルが境内を彩り、訪れた人たちは風が奏でる涼しげな音色を楽しんでいる。

願い事を短冊に

 周辺には「篠栗四国八十八ヶ所霊場」と呼ばれる88の札所が点在し、山王寺は六十一番札所となる。


山間部にある、六十一番札所の山王寺


 「若い人が寺に来てくれるきっかけになれば」と、12年ほど前に風鈴まつりを始めた。風鈴の数は当初100個ほどだったが、年を重ねるごとに約4000個にまで増え、夏の風物詩として定着した。今年のまつりは10月1日まで続き、風鈴もその頃には5000個ほどに増える見通しだという。


約4000個の風鈴が境内を彩る


 寺によると、風鈴は中国から伝わったもので、様々な邪気を払うためにお堂や塔の軒の四方につり下げられる鈴・風鐸(ふうたく)が起源という。


お堂の角にある風鐸


 以前は、訪れる人といえば、お遍路さんをはじめ年配者が多かったという。最近はSNSなどでフォトジェニックなスポットとして注目され、若い女性や家族連れの姿も目立つようになった。


フォトジェニックなスポットとして注目されている


 境内に複数設置された風鈴のトンネルは、全体で長さ約50メートルになるという。参拝者は奉納料500円で、短冊に願い事を書いた風鈴を飾ることができる。


考えさせられる”名言”も


 「戦争が終わりますように」「早くコロナが終息しますように」――。短冊に記された様々な願い事の中には、「念ずれば花ひらく」「人間は笑うために生きているんや」といった“名言”も風に揺られて見え隠れしている。


「少しでも明るい気持ちに」と松下さん


 住職の松下真明(しんめい)さん(46)が「前向きな気持ちになって帰ってもらえたら」と家族で書いたものだという。参拝者の中には、「なるほど」という表情で短冊の文字をじっと見つめたり、スマートフォンで写真に収めたりする姿が見られた。


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シャボン玉舞う

 SNSで風鈴のことを知り、福岡県春日市から夫婦で訪れた西川康治さん(47)は、涼しげな音色に導かれるように駐車場から階段を上って来た。タイミングよく、境内では無数のシャボン玉が舞っていた。「とても幻想的ですね、来てよかった」と夫婦で顔を見合わせて喜んだ。


風鈴とシャボン玉の“共演”


 風鈴のトンネルのそばには「シャボン玉製造機」を設置している。10時から16時30分まで、シャボン玉が30分おきに噴き出る仕掛けで、風鈴との“共演”を楽しめる。


頭上を鮮やかに彩る風鈴


 爽やかな音で、訪れた人に涼を運んでくれる風鈴だが、松下さんは、まつりの期間に接近する台風に毎年泣かされるという。


風に揺れる


 台風シーズンになると、進路予想図とにらめっこ。「今回は影響を避けられそうにない」と判断すれば、家族総出で風鈴を安全な場所へと”避難”させる。


境内に爽やかな音が響く


 「大丈夫だろう」と思っていたら予想を超える強風で風鈴が割れてしまったり、備えを万全に風鈴を撤去していたら肩すかしを食ったり。「寺が山間部に位置していることもあって、予想は本当に難しい。もう、台風という言葉を聞くのもいやです」

別名「タヌキ寺」

 境内には、風鈴のほかにも、インスタ映えスポットが点在している。別名「タヌキ寺」と呼ばれる山王寺。タヌキの置物がたくさんあることでも知られる。


タヌキ寺としても知られる山王寺


 今では本物のタヌキに出会うことはめっきり減ったが、先代の頃にはお堂にもよく姿を見せていたという。置物は住職が集めたもののほか、信者からの奉納で年々増えて、今では少なくとも大小100体はあるそうだ。


よく見ると石像の足元にも


 境内のいたる所に飾られ、力士や野球選手、さらには人気キャラクターの姿をしたタヌキも。個性あふれる置物の中から、お気に入りを探して楽しむ人もいるという。


本堂のそばにはお相撲さんタヌキも


 入り口そばには、「ご縁」と掛けた大きな「五円玉」のオブジェがある。直径約2メートルで、穴の部分から顔を出して記念撮影をするスポットとしても人気がある。


「五円」と「ご縁」を掛けたオブジェ


 風鈴の拝観時間は9時から18時まで。9月下旬にはライトアップするイベントも計画しているそうだ。


カラフルな短冊が幻想的に揺れる



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