火災で焼失した園舎を全国からの支援で再建 宇美八幡宮保育園で笑顔の卒園式

新しい園舎で卒園式を終えた園長の伊藤佳和さん(左奥)と園児ら

記事 INDEX

  • 混乱の中、保育を継続
  • ふるさと納税5405件
  • 「青いお屋根」で卒園式

 安産や子育ての神様として知られる、福岡県宇美町の宇美八幡宮。そのそばにある認可保育所「宇美八幡宮保育園」の真新しい園舎で19日、卒園式が開かれました。60年もの歴史を紡いできた園舎は、2020年11月の火災で焼失。「歴史ある園舎を取り戻そう」と、八幡宮の参拝者や地域住民からの寄付に加え、全国から延べ5400人がふるさと納税を通じて資金面で支援し、再建を果たしました。

混乱の中、保育を継続

 県や園によると、戦後の復興期の1951年に設置認可を受け、宇美八幡宮の境内で保育を始めました。60年、境内そばの現在地にあった演芸場「子安座」の跡地に、劇場の材木を再利用して木造平屋の園舎を建てたそうです。卒園児は3300人を超えます。

 その築60年の園舎で火の手が上がったのは2020年11月3日午後4時頃。祝日で人的被害は免れたものの、「青いお屋根」で地域に親しまれてきた園舎は焼け落ちました。近所のたき火の火の粉が原因とみられるそうです。


焼失から再建までの思いを語る伊藤さん

 宮司と園長を兼ねる伊藤佳和さんは「ぼうぜん自失とはあのこと。真っ白になった」と振り返ります。そんな混乱の中で、その日のうちに町と協議し、翌日から町内にある姉妹園の空き部屋を借りて保育を継続する方針を決めました。


新園舎の完成まで、宇美八幡宮の施設を間借りして保育を続けてきた

 園児の連絡簿が失われたため、町役場に保管してある情報を頼りに100人近い保護者に電話をかけ、事情を説明して姉妹園へ登園するようお願いしました。現在は八幡宮の施設を間借りして改装し、給食とおやつは姉妹園で調理して運んでいます。


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ふるさと納税5405件

 再建にかかる費用は約2億5000万円に上ります。町は補助金の財源を確保するため、ふるさと応援寄付金に関する条例の施行規則を改め、指定事業に「園舎焼失復旧・再建」を追加。SNSで再建への支援を呼びかけました。返礼品の「あまおう」人気も後押しし、20日余りで全国から5405件、総額6703万6000円が集まりました。返礼品や送料などの経費を除く2919万3000円が再建に充てられます。


園舎再建に向けて行われた神事(昨年10月)

 再建費用は補助金や火災保険金、借り入れなどで賄いますが、それでも十分ではありませんでした。境内に看板を立てて<保育園や当宮の力だけでは到底及ばず>と支援を呼びかけると、今年1月末までに参拝者や卒園者、町民ら約670人から1000万円以上が寄せられました。

 町内に住む安川博さんはお宮まで足を運び、「使うちゃりやい」と100万円を寄付しました。小学校教諭として長く教育に携わった後、祖父、父に続いて町長を務めた安川さん。「古くから町の子育てや幼児教育を支えてきた、保育の元祖のようなところ。応援しなければ」と言います。


寄付した人たちの名前を八幡宮境内に掲示し、感謝を伝えている

 焼けてしまった机やいす、ピアノなどの購入費はクラウドファンディングで支援を呼びかけました。いくつものあたたかい応援メッセージと共に、目標を超える112万9000円が集まりました。

「青いお屋根」で卒園式

 たくさんの善意に支えられた新しい園舎は、焼失前と同じ木造平屋。「これから100年、子どもたちが本物の木に囲まれて過ごせるように」と杉の無垢材をふんだんに使っています。シンボルの青い瓦屋根もよみがえらせました。


新しい園舎の前で記念撮影する園児や保護者、保育士ら

 「先人が築き、守ってきた園舎をなくした申し訳なさと、ここまで来られた感謝。それに尽きます」と伊藤さん。間借りの期間もすくすくと成長してくれた園児を、何とか新しい園舎から送り出したいという願いもかないました。


卒園児に保育証書を手渡す伊藤さん

 18人の卒園児全員の保育証書を1枚ずつ丁寧に手書きした伊藤さん。卒園式では「1ねんはんものあいだ、かりのえんしゃですごすことになってしまって、ごめんなさい。おともだちとなかよく、げんきにしょうがっこうへかよってください」とはなむけの言葉を贈りました。



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