身近にある「かけがえのない」風景 小倉の"日常"を缶バッジに
旦過市場(北九州市)付近の大火で被災した老舗映画館「小倉昭和館」、JR小倉駅そばのストリップ劇場「A級小倉」、街のシンボル・小倉城――。そんな小倉の風景を淡い色づかいでイラストにしたバッジが、市民らの人気をひそかに集めている。
制作したのは、北九州市小倉北区に事務所を置くグラフィックデザイナー・岡崎友則さん(43)。同市門司区出身で、デザイン系の短大から福岡県内のデザイン会社などを経て、2008年に独立した。デザインの公募コンテスト「九州ADCアワード2021」でグランプリを獲得するなど活躍している。
身近にある何げない風景こそ、かけがえのないもの――。「観光スポットばかりではなく、どちらかというと市長が隠したいような場所も、少しだけきれいに加工して紹介したい」と、地元の人しか知らないような"日常"の風景を選び、写真をベースにパソコンの画像編集ソフトを使ってデザインしてきた。
岡崎さんは2011年、そうした情景をポストカードにして販売したが、「思うように売れなかった」という。そこで改めて、直径約5センチの缶バッジにデザインした。
小倉城そばにある「しろテラス」のリニューアルに合わせて今春、2個セットのカプセルトイ(300円)として販売。「売れるとは思っていなかった」が、蓋を開けてみると2日で完売する人気だったという。「欲しいバッジが出るまで、何度も挑戦するというゲーム性が受けたのでは」と岡崎さんは話す。
「ストリップ劇場のガチャ発見!」。当初の一番人気は、SNSで話題になった「A級小倉」の缶バッジだった。しかし旦過の2度目の火災により、街の大切な風景の一つが失われ、被災前の昭和館をデザインしたものが注目されるようになったという。
しろテラスでの販売は終了したが、SNSでは再開を求める声が上がった。そうした要望に押され、今後は種類を増やして、小倉駅や北九州空港などで再びカプセルトイとして販売する計画を立てているそうだ。
「旦過市場の再生を支えたい」と、黒田征太郎さんら北九州ゆかりのクリエイターと一緒に応援のバッジを制作し、販売する計画が進んでいる。市場内で販売する予定で、収益の一部を寄付することにしている。