街と心を照らして10周年 「福岡クリスマスマーケット」

初めてイルミネーションを施した天神中央公園で、来場を呼びかける佐伯さん

記事 INDEX

  • 年々進化、魅力プラス
  • 一人の若者の熱意から
  • ずっと愛される行事に

 寒い冬の夜に人を集められるイベントなんてできるわけがない――。そんな見方を覆し、2013年から福岡市中心部のにぎわいを演出し続ける「福岡クリスマスマーケット」。仕掛け人で、企画会社「サエキジャパン」(福岡市)の社長を務める佐伯岳大(たかひろ)さん(41)に、10年間の歩みや今後の“野望”を聞きました。


佐伯岳大さん

 福岡県鞍手町出身。幼い頃から行動的で、大学時代には東京などへの移動にヒッチハイクを多用した。九州産業大2年の19歳の頃に起業し、使い捨てカメラの回収から、事務用品の取り次ぎなどへ事業を広げた。1月2、3日の箱根駅伝をテレビ観戦するのが年初めの楽しみ。

年々進化、魅力プラス

「5、4、3、2、1、メリークリスマス!」

 11月17日に点灯式が行われた天神中央公園のイルミネーション会場。佐伯さんは来場者らとカウントダウンをして、初開催となる「QTnet presents 光のフォレスト」の開幕を宣言。「街に明かりをともしながら、みんなの心も明るくしていけたらうれしい」と、青や黄の光を見つめました。

 福岡クリスマスマーケットは毎年11月から12月25日頃まで博多や天神などの福岡都心部で開催。木造のヒュッテ(小屋)が並び、クリスマス雑貨やホットワインの販売、ステージイベントなどが企画され、イルミネーションが輝きます。

 2013年にJR博多駅前広場でスタート。15年から天神の市役所西側ふれあい広場、18年からは大丸福岡天神店パサージュ広場でも開かれています。

 今年加わった光のフォレストも福岡クリスマスマーケットの一環。博多駅前や市役所付近の会場をつなぎ、街のにぎわいを広げていく狙いです。

 バイオリニスト・葉加瀬太郎さんによるテーマ曲「Together on Christmas」も今年、新たに登場しました。葉加瀬さんへは今回、つてを頼ってアポイントを取り、イベントへの熱い思いを1時間ほど語って、引き受けてもらったそうです。


各所でサンタに出会える(会場の一つ、「ナカスキボウノヒカリ」で)

 また、クリスマス気分を高め、おもてなしにも生かそうと、高さ50センチ~5メートルほどのサンタクロース人形約320体を実行委で用意し、各会場や近くの店舗に展示しています。


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一人の若者の熱意から

 昨年は540万人超を集客した冬の福岡の一大イベント。始まりは、26歳だった佐伯さんが本場・ドイツで目にした光景でした。

 2007年、知人に誘われてドイツのクリスマスマーケットを訪問。寒い中、みんなが集まり、ホットワインを飲みながら語り合っている姿が印象的で、「福岡でもやれたら」と心を動かされました。


「本を読んでいると、心が洗われる」と話す佐伯さん。福岡クリスマスマーケットのマグカップは日頃から愛用している

 ただ、多額の予算が必要で、場所を借りられる見込みもありません。意欲と現実の間でくすぶり続けていた12年冬、思いを友人に打ち明けたところ、「やろうよ」と背中を押されました。自らを奮い立たせるため、再びドイツへと向かいました。

 あの光景を改めて目の当たりにし、腹が決まりました。「僕が福岡でやれば、多くの人が、今までにない、すてきなクリスマスを過ごせる。やらずに後悔したくない」


今年も博多駅前では多くの人がマーケットを楽しんでいる

 帰国後すぐに実現へと走り出しました。企画書を仕上げるために朝も晩も協力者を訪ね、博多駅前の広場を使いたいと管理会社の社長に何度も直談判しました。熱意を知った仲間から活動資金の援助を受けるなど、人の輪にも助けられました。

 思いが実を結んだ13年、博多駅前で初めて開催したマーケットは130万人を集客。ヒュッテのほかステージイベントも盛況で、本場にならってマグカップで提供するホットワインも好評でした。そのにぎわいに当時のJR九州幹部も舌を巻き、毎年開催されるようになりました。


毎年違う柄で販売されるオリジナルマグカップも人気。今年のために用意した天神と博多の柄

ずっと愛される行事に

 当初は「日本一のクリスマスマーケット」を目標に取り組んでいましたが、今では「世界一」に”アップグレード”。「これまではドイツのクリスマスマーケットを手本にした期間」と語り、これから福岡で「オンリーワン」に育てていく考えです。


社内には「大変は楽しいよりずっと楽しい」の文言を掲げている

 今後10 年で、博多と天神の一帯を無料のクリスマス・テーマパークに――。まず来年は、福岡クリスマスマーケットの名称を変更し、街中のサンタの数を増やして、中心部をより一体的に盛り上げたい考えです。

 「『命惜しむな、名を惜しめ』的な発想で、未来に続くものをやっていきたい」。目指すは、博多祇園山笠や博多どんたく港まつりなどの”伝統行事”のように、多くの人に長く愛される存在です。「チャレンジこそ生きる道」と進化を重ねていきます。


年末が近づくにつれ、イルミネーションが心にしみるという。「12月は『今年もお疲れさま』と、みんながたたえ合う『称賛の月』だからでしょうね」

 佐伯さんは、九州観光機構のチャンネル九州塾で、福岡クリスマスマーケットと同じ2013年に運行を始めたJR九州の豪華観光列車「ななつ星in九州」の歩みと絡めながら、イベントの実現秘話を語っています。

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