「国鉄」が香るハンドクリーム 収益の一部でブルトレを維持

発売されたハンドクリームと「ナハネフ22」

記事 INDEX

  • 昭和レトロな鉄道の”旅”へ
  • 若い世代にも伝えたい魅力
  • 持続可能な活動を目指して

 「国鉄の香り」――。列車に揺られて旅に出た昭和の思い出がよみがえるハンドクリームが誕生しました。鉄道関連グッズを企画・販売する合同会社「ビイエルテイ」(横浜市)の新商品。貝塚公園(福岡市東区)に保存展示されているブルートレイン「ナハネフ22」の車内の香りを再現し、売り上げの一部はナハネフの保存・維持費に充てられます。

<ナハネフ22>
1965年頃に博多―東京駅間を結んだ寝台特急「あさかぜ」などに使われ、1970年代後半には門司港―西鹿児島駅(現・鹿児島中央駅)間を結ぶ寝台急行「かいもん」としても活躍した。1987年頃に廃車となり、1990年にJR九州から福岡市へ無償貸与された。


貝塚公園の「ナハネフ22」


昭和レトロな鉄道の”旅”へ

 「ブルトレを含め、昭和30、40年代頃の国鉄の車内は独特の匂いがしました。これを再現した商品です」。ビイエルテイを経営する高橋竜さんが熱く語ります。

 高橋さんは劣化が進んでいた貝塚公園のナハネフ22を修繕するため2017年と19年にクラウドファンディング(CF)を企画しました。

【その時の記事はこちら】
ブルトレの雄姿を未来へ 小学生と会社経営者が「二人三脚」で目標達成!
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 CFの返礼品として、17年に「国鉄の香り」を考案したのが始まりで、以来、ルームフレグランスやせっけんなどを「COQTEZ」のブランドで商品化。高橋さんは「クリームを塗れば誰でも、当時の客車に乗った疑似体験ができます」と話します。


高橋竜さん

横浜市在住。幼い頃から鉄道が大好き。小学生の頃、寝台急行「銀河」の引退を間近で見て、20系客車の深い藍色、丸みのある車体、ディーゼル発電機の轟(ごう)音が忘れられないという。2005年発行の鉄道雑誌で貝塚公園のナハネフの劣化を知り、09年から車内の掃除ボランティアを始め、12年には約350万円の私費で修理した。

 香りの再現は調香師に依頼しました。調香師から届いたサンプルを高橋さんがナハネフの車内で嗅ぎ比べたそうです。高橋さんいわく、国鉄車両の鼻を突く”あの匂い”を嗅ぐと、なんとも懐かしい気持ちに浸れるとのこと。


客車に乗った疑似体験ができるというハンドクリーム


 この時代の客車は、職人が手作業で製造していました。その分、列車に人のぬくもりが感じられるといいます。再現された香りを試した人からは「国鉄時代の駅の発車ベルが聞こえてきそう」といった声が寄せられているそうです。

 「新幹線の開通が近づいてきた昭和30年代、あの時代の感じです。国鉄に乗ったことがある方ならきっと満足してもらえる」。高橋さんの声はさらに熱量を帯びます。


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若い世代にも伝えたい魅力

 「香りは最もダイレクトに脳に訴える力を持っています」と高橋さん。今回、若い世代にも、国鉄車両の魅力と列車に乗ったときの感動を伝えたいとハンドクリームを発売しました。

 クリームは確かに、ナハネフの”化学的”な車内の匂いがします。しかし香りは天然素材によるもので、化学薬品を一切使わないアロマオイルです。


ハンドクリームからブルトレの車内の香りが


 安らぎを与えるアロマ成分に加え、クリームそのものにもこだわっています。ホホバオイルやシアバターなどの保湿成分で作られ、水分量も多いため、使った後はサラサラしています。スマホやパソコンを操作してもベタつきは気になりません。




「旧国」の香りも

ハンドクリームは「国鉄の香り」のほかにも、「旧国の香り」を用意しました。戦前から昭和30年代前半までに製造された床が木製の「国鉄旧型電車」をイメージして香りを調整したそうです。

持続可能な活動を目指して

 鉄道を楽しむ世界にこれまで、「香り」というジャンルはなかったそうです。売り上げの5%がナハネフの修繕費に充てられます。商品の収益によって車両の維持資金を確保する仕組みをつくり、持続可能な取り組みを目指します。


売り上げの一部がナハネフの修繕費に充てられる


 「このすばらしい車両の維持をサポートする体制がなくならないよう、次の世代へバトンをつなげていきたい」と高橋さんは話しています。

 ハンドクリームは、「国鉄の香り」「旧国の香り」とも3000円(消費税・送料別)で、公式オンラインショップ「COQTEZ」で取り扱っています。



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