鉄工所の片隅から世界の「ヨシムラ」へ 大野城市で特別展

吉村さんがチューニングし、米軍の愛好家らとレースを楽しんだバイク

 日本の二輪レースの草分けで、世界的バイク部品メーカー「ヨシムラジャパン」(神奈川県愛川町)を創業した吉村秀雄さん(故人)に焦点をあてた特別展「白木原ベース サイドストーリー」が、福岡県大野城市の「大野城心のふるさと館」で開かれている。6月18日まで。

米兵に慕われた「おやじさん」

 かつて米兵らが暮らした春日原住宅地区(通称・白木原ベース)近くでバイク店を開き、モータースポーツ界で「ゴッドハンド」とも呼ばれた吉村さんの偉業を知ってもらおうと、大野城市などが企画した。


「ヨシムラ」の代名詞、集合管マフラー


 吉村さんは1922年、現在の福岡市博多区竹丘町で生まれた。学生時代から飛行機に興味を持ち、19歳で航空機関士となって、戦時中は海軍の航空輸送で東南アジアなどを飛び回った。


再現された作業小屋


 戦後の1954年、実家の鉄工所の一角にバイク店「吉村モータース」を設立。米軍板付空軍基地に駐留した若い米兵たちは、英語を話し、バイクの修理もできる吉村さんを「POP(おやじさん)」と呼んで慕った。基地などで開かれたバイクレースにも参加し、エンジンなどを改造してスピードを速めるチューニングの技術を磨いた。


帰国する米兵のため、自宅でパーティーを開いた吉村さん(右から2人目)と長女の森脇南海子さん(右)=森脇さん提供


 78年には、三重県で開催された第1回鈴鹿8時間耐久レースにプライベートチームで参戦し、ホンダ勢を破って見事優勝。町工場が世界一のメーカーに勝ったと話題を呼び、「ポップ」と「ヨシムラ」の名が世界に広まった。


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整備したバイクや部品を展示

 会場には、吉村さんが整備したバイクや部品などが並び、当時の町並みや暮らしを伝えるパネルも展示されている。


吉村さんがチューニングし、磨き上げたエンジンのカムシャフト


 長女の森脇南海子(なみこ)さん(77)は「白木原ベースがあった町は、私たち家族の思い出がつまったふるさとで、父が生涯、夢中になれるものと出合えた場所。みなさんに足を運んでいただき、光栄」と話している。


吉村さんの弟子で、森脇さんの夫・護さんの会社「モリワキエンジニアリング」との合作で、第6回鈴鹿8耐にエントリーしたバイク


 午前9時~午後5時、月曜休館。一般300円、高校生以下無料。問い合わせは大野城心のふるさと館(092-558-5000)へ。


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