マリンワールド海の中道(福岡市東区)で2019年春に始まった骨格標本の常設展示「ほねのおと~HONE NOTE~」では、マッコウクジラの大きな骨を見ることができます。このクジラ、北九州沖の周防灘からやって来たのだとか。展示に至る経緯を水族館の担当者に聞きました。
北九州で見つかったクジラ
北九州空港沖で2015年9月、死んでいるマッコウクジラが見つかりました。周辺を航行する船にぶつかる恐れがあるため、地元漁師の協力で、クジラの尾にロープをかけて苅田港まで移動しました。特注の架台にのせたクジラの巨体をクレーンで吊り上げました。
陸揚げしたマッコウクジラは体長16.3メートル、体重33トンの雄。頭部には、船によるものとみられる大きなスクリュー痕があったそうです。調査が終わったクジラは解体し、マリンワールドが頭部のみを骨格標本にすることになりました。
きれいな骨格標本を作るには、肉片を完全に取り除き、骨の中の脂分を抜く必要があります。マリンワールドは、施設そばの砂浜に頭部を埋め、自然の力で分解が進むのを待ちました。
それから約3年、頭骨を砂浜から掘り出す作業は2018年5月に行われました。骨を洗浄し、割れた部分を補い、慎重に組み立てる作業を経て2019年3月、マリンワールド1階に新設された「ほねのおと」で、骨格標本の展示が始まりました。
どんな展示なの?
長さ5.4メートルの迫力あるマッコウクジラの頭骨は、ほねのおとの一番の見どころです。下から見上げたり、2階から眺めたり、3本の柱に支えられた頭骨は、さまざまな角度から観察できます。ほかにも、触れることができるクジラの骨があり、「ザラザラ」「ゴツゴツ」とした感触に、子どもたちの歓声が響きます。
ほねのおとには、イルカやアシカの全身骨格、サメのあご、バショウカジキやイシダイ、ヘコアユ、オウムガイなど60点を超える骨が並んでいます。
骨格標本づくりを担当したマリンワールドの山口絢子さんは「骨に関する資料がない魚もいるので、組み立てるのはむずかしい。一つひとつを確認しながら慎重に配置する作業は、まるでパズルのよう」と話します。
展示は今後も増えていくとのことです。海洋生物のさまざまな骨を間近で見て、その営みに思いを巡らせると、生命をはぐくむ海への興味も膨らみますよ。