2代目「大きな椅子」がまた話題に 豊前市の「もみじ学舎」

もみじ学舎の運動場にそろった大きな椅子と机

記事 INDEX

  • 「大きな机」の隣に
  • 遊び心のつもりが
  • 山間に「笑顔の花」

 インスタ映えスポットとして広く話題になった福岡県豊前市の「大きな椅子」が新たに作られ、同市上川底地区の「もみじ学舎」敷地に今春設置された。”2代目”のそばには、2021年に登場した「大きな机」も並び、机と椅子のセットで山間の集落ににぎわいを呼んでいる。

「大きな机」の隣に


椅子の座面から見たもみじ学舎


 もみじ学舎は、豊前市の山あいに位置する。過疎化のため廃校となった旧上川底小学校を交流施設として活用し、住民たちの手で大切に守ってきた。旧校舎の校長室や給食室などの面影を残しながら、カフェやおしゃれな雑貨店などが営業している。


往時の面影を残す校舎内


 巨大オブジェの制作に携わったのは、地元住民でつくる実行委員会のメンバーと、障害者の就労を支援するNPO法人「森の学校」理事長の舟橋慎一郎さん(64)たちだ。最初に手がけた大きな椅子は、学舎から約4キロ離れた休耕田に置いていたが、制作から6年が過ぎて傷みが目立つようになり、昨年末に解体された。


もみじ学舎の約4キロ麓にあった初代の大きな椅子(2021年撮影)


 2代目は、舟橋さんの友人から太さおよそ40センチのヒノキの木を譲り受け、大きな机の隣に2か月ほどかけて完成させた。座面は3.5メートル四方、高さは約7メートルあり、以前のものより1メートルほど高くなった。


豊かな緑に抱かれた上川底地区に鎮座する


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遊び心のつもりが

 そもそも、なぜ大きな椅子を作ったのだろうか。巨大な椅子と人を対比させ、人間という存在の小ささ、はかなさを示唆しようとしたのか。仕掛け人の舟橋さんにそんな疑問を投げかけると、笑って一蹴(いっしゅう)された。


見た人がほっこりしてくれたら、と作った初代の椅子(2022年撮影)


 きっかけは、地元の人たちへの遊び心だったという。田んぼの先に突如現れた巨大な椅子を目にしたら、「また変なことをやってるなぁ」と、ほっこりしてもらえるのでは――。そんな思いから、2017年に作ったそうだ。


星空の下で。初代の大きな椅子(2018年撮影)


 ところが予想外の反響を呼ぶことに。宣伝は一切していないのに、SNSなどで「映える」と一気に評判が広まり、新聞や雑誌、全国放送のテレビ番組でも紹介された。車もめったに通らない田舎道が休日には渋滞するほどの盛り上がりを見せ、「情報が広まるスピードに驚き、時代のパワーを感じました」と舟橋さんは振り返る。

山間に「笑顔の花」

 最初に作った椅子は、脚にボルトを杭(くい)のように打ち、足を掛けて登れるようにしていた。今回は万一の危険を避けようと、登るための足場は設けなかった。


椅子の座面から集落の様子を望む


 「高いところに登りたいと思うのは、人間の本能なのでしょうねぇ」。脚にしがみついてよじ登る人が相次ぎ、いざ下りる段になると、怖くなって助けを呼んだり、意を決して飛び降りたり――。


設置されたはしごを使って椅子の上へ


 けがをしてはいけないと、完成の1か月後には、はしごを取り付けて「自己責任」で登り下りできるようにした。


安全に楽しむよう看板で注意を呼びかける


 今や「豊前市? あぁ、大きな椅子があるところね」といった声も聞かれ、国内にとどまらず、台湾や韓国、欧米からの観光客もやって来る人気スポットに。休日などには100人以上が訪れ、運動場に用意した駐車場がいっぱいになることもあるそうだ。


「机にはしごを付ける予定はありません」とのこと


 平日の昼、隣の上毛町から娘と訪れた進宗太朗さん(65)は、愛犬とともにはしごを登った。「山と空と校舎。周辺の風景とうまくマッチして面白いですね」


「楽しんでいる姿を見ると、続けていてよかったなぁと思います」


 「想像していなかったことばかり。わざわざ遠方から来てくれて、写真を撮って楽しんでいる姿を見ると、続けていてよかったなぁと思います」と舟橋さん。遊び心がきっかけになり、豊前の山間に「笑顔の花」を咲かせたようだ。


運動場には、普通サイズの椅子と巨大な鉛筆のオブジェも



(資料写真を含む)


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