身近な場所で認知症カフェ 筑後市立図書館の取り組みが人気

筑後市立図書館の認知症カフェでストレッチ運動をする参加者たち

 福岡県の筑後市立図書館で2か月に1回、認知症の人やその家族らが交流する認知症カフェが開かれている。図書館を活用した認知症カフェの取り組みは珍しく、市外から訪れる人もいるという。関係者は「図書館という身近な施設で、気軽に参加できるスタイルが喜ばれている。認知症への理解を広める情報発信拠点になっている」と手応えを感じている。

理解を広める拠点に

 6月下旬、貸し出し用の書籍を収めた本棚が並ぶ読み聞かせスペース「おはなしの部屋」で開かれた「図書館で認知症かふぇ」。集まった高齢女性13人を前に、一ノ瀬留美館長が絵本の読み聞かせを行った。

 続いて同館の職員が、歯周病の治療が認知症予防につながることなどを紹介する本の内容を要約して話すと、参加者からは「分かりやすかった。借りて帰りたい」との声が上がった。

 また、市地域包括支援センターの職員が座ったままでできるストレッチ運動などを指導。「失敗しても、できるようになるまで繰り返すことが脳の働きを良くします」とのアドバイスを受け、参加者らは数字を数えながら「5」や「7」の倍数の時に手をたたき、体と脳の機能を鍛える運動に挑戦した。

 最後に参加者が車座になり、「将来、子どもにできるだけ迷惑をかけないよう発症を遅らせる努力をしたい」「認知症になることは覚悟しており、今のうちからその時にどうしたらいいかを学びたい」などと意見を出し合った。

県外からの参加者も

 図書館によると、認知症カフェは同館と地域包括支援センターが中心となり、2018年6月にスタート。偶数月の最終水曜日に開催しており、一ノ瀬館長は「認知症が気になっても、いきなり地域包括支援センターや専門外来を訪ねることをためらう人は多い。図書館なら気軽に参加できるのではと考えた」と話す。

 事前予約は不要で、名前や住所を伝える必要もない。訪れた人は好きな名前を名札に書いて参加する。盛り上がっている様子を見て、途中から参加することもできる。評判が広まり、長崎や佐賀県から訪れる人もいるという。認知症に関する本を集めたコーナーも設けている。


認知症に関する本を集めたコーナー


 公益社団法人・日本図書館協会(東京)によると、会議室などで認知症カフェを開いたり、関連書籍の特設コーナーを設けたりする図書館が増えているという。

 川崎市立宮前図書館は15年、認知症に関する本を集めた「小さな本棚」を設置した。同館の舟田彰館長は「平日の図書館利用者は高齢者が中心で、認知症に関する情報を求めている人も少なくない。筑後市立図書館の取り組みは、各地の図書館の参考になるだろう」と話している。


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