お年寄りの言葉にほっこり 福津市・波折神社の「津屋崎みくじ」
記事 INDEX
- 水に流して心に刻む
- 地元住民たちが協力
- 笑顔のきっかけに!
「やると思ったらまず一歩 ダメと思ったら 三歩下がればいいやない」「花を咲かすには 土と水と太陽」――。福岡県福津市の波折神社で、地域の高齢者の言葉を記した「津屋崎みくじ」が作られています。ユーモアの中に人生の奥深さを感じさせるものばかり。くすっと笑えたり、ほっこりしたり、訪れる人の心を温かくしています。
水に流して心に刻む
津屋崎みくじは、毎月第1、第3日曜日の午前10時~午後3時、数量限定で300円で販売しています。
くじに書かれている言葉は50種類ほど。私も引いてみると、「あなた頑張ったよ 頑張ったことは 頑張った者にしかわからん」と記されています。誰の言葉なのかはわかりませんが、自分への励ましのメッセージのように感じられ、力が湧いてきました。
くじは水に溶ける素材で作られており、読んだ後は境内にある水がめに流して浄化します。「別れる瞬間が最も心に刻まれる」。そんな思いが込められた”流儀”です。
地元住民たちが協力
このくじを考案したのは、地元のイラストレーター三浦直子さん(53)です。地域住民とともに歩むまちづくりに魅力を感じ、2018年春に福岡市内から福津市津屋崎へと住まいを移しました。
転居から2年ほどたった頃、父親が病気のため思うように動けなくなりました。生活の自由が狭められていく高齢者が”幸せ”を見つける手伝いをできないか――。考えた末、「その人の声を周りに聴いてもらうこと、そして周りが聴いてくれていると実感してもらうこと」が、生きがいにつながるのではないかとの思いに至ります。
以前から、高齢者の「ユーモアがあり哲学的」な言葉に何度も救われてきたという三浦さん。「この言葉を形にするのが、私たちにできることなのでは」。高齢者の言葉をくじにするアイデアを思いつき、仲間を募って動きだしました。
とはいえ、高齢者にいきなり”格言”を求めても、答えは返ってきません。普段の何げないやり取りの中で印象に残る一言を、みんなであれこれ記憶をたどりながら、一つひとつ集めていきました。
くじを包む部分は畳店が寄せてくれた畳の縁(へり)で飾り、くじを流す水がめは米店の庭にあったものをもらい受けました。立て札は大工が用意してくれたり、プリンターは近くの海産物店が使わせてくれたりと、活動は地域に広がっていきました。
笑顔のきっかけに!
完成したくじは、2021年秋に行われた波折神社の「御遷座八百年奉祝祭」に合わせて期間限定で初披露。再開を求める声を受け、22年10月から定期的な販売を始めました。神社の総代・舩津廣見さん(70)は「なんじゃこれ?と思う言葉もあるけど、これが津屋崎らしさ。参拝者も増えてきて、いい効果を生んでいます」と笑顔です。
「言葉の意味がわからないときもあるかもしれません。でもそれが、いつか何かのヒントになったり、笑顔のきっかけになったりすればいいなと思っています」と三浦さん。くじにとどまらず、多くの人が「参加」を実感できるまちづくりを進めていきたいと考えています。