廃校を楽しく使って地域を元気に! 鞍手町の「くらて学園」

映画やCM、コスプレ撮影の舞台となっている教室

記事 INDEX

  • 教室跡に靴工房や喫茶店
  • コスプレ撮影会に運動会
  • 廃校舎で続く未知の挑戦

 過疎化や少子化で廃校になる学校が増える中、校舎の活用策で注目されている施設がある。福岡県鞍手町の架空の学校「くらて学園」だ。2015年3月に閉校した鞍手南中学校の旧校舎を、福岡市の企画会社と町がタッグを組んでよみがえらせた。廃校を舞台にしたイベントを開いたり、企業を誘致したりして、にぎわいを生んでいる。

教室跡に靴工房や喫茶店


鞍手南中の廃校舎を活用したくらて学園

 コロナ禍でイベント開催が困難になった状況でも、「収支は、ほぼトントンで乗り切った」という。学園にはこれまで、総務省のほか北海道など国内各地の自治体にとどまらず、同じく少子化が深刻な韓国や中国などからも視察団が訪れている。


体育館には、鞍手南中の校歌が掲げられている

 6月の「鞍手パンフェスティバル in くらて学園」では、屋台やキッチンカーなど約30店が並び、2日間で町の人口(1万5210人)とほぼ同じ数の人が訪れた。「こんなに来てもらえるとは夢にも思わなかった」と運営会社の重松克則社長。周辺の渋滞など課題も浮かび上がったが、商品のほとんどが午前中に売り切れる盛況ぶりだった。


小高い丘の上にある学園の入り口

 廃校舎の活用法は多岐にわたる。教室を仕事場にする企業は、中国のロボット製造会社を含めて20社を数え、空室は現在一つだけだ。家庭科室をリフォームした靴のアトリエには、万力などが並ぶ本格的な作業場のほか、ソファが置かれた豪華な試着スペースも。オーダーメイドの靴を注文する客の8割は女性で、職人が2か月かけて丁寧に作り上げる。


家庭科室をリフォームしてできた靴のアトリエ

 教室をまるごと使ったミニ四駆の大型コース「くらてサーキット」も学園名物の一つ。初心者も楽しめるそうで、電源はもちろん、予備のパーツなども販売している。


教室をまるごと使ったミニ四駆のコース

 ほかにも、図書室を改造したおしゃれな喫茶店や、遺影の撮影にも対応する写真スタジオなどがある。廊下を歩いていると、バラエティー豊かな教室が次々と現れ、まるで文化祭が開かれているかのようだ。


図書室を改造した喫茶店


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コスプレ撮影会に運動会

 意外なのは、運動場や体育館を利用した「運動会の会場」として人気ということだ。年間約20組に貸し出しているそうだ。地元企業のほか、「青春を取り戻そう」とコロナ禍でできなかった運動会を、福岡大と西南学院大の有志約150人で開催したことも。バスケットボールやバレーボールもできる体育館は、雨天でも利用できるため、雨天でも中止にする必要がなく好評だという。


校舎から見える運動場

 大好きなキャラクターになりきって撮影ができる「コスプレの聖地」としても定着している。思い思いの衣裳を身に着け、教室や体育館、プールなど自由に撮影の舞台を選ぶことができ、若者らを中心に根強い人気がある。


白一色に塗られた教室はインスタ映えすると人気

 11月下旬の休日には、北九州市の地元アイドルたちが運動場や体育館を使って撮影会などを開催した。県内外から大勢のファンがカメラを手に押し寄せた。

廃校舎で続く未知の挑戦

 メディアにも頻繁に登場している。地域発特撮ドラマ「ドゲンジャーズ」などのテレビ番組の舞台にも。高校生の国内映画コンクールで最高賞に輝いた「今日も明日も負け犬。」などの映画や、CMでも撮影の場として利用された。


保健室も映画の舞台に

 コスプレの聖地、地域の大型イベント、企業誘致、運動会……。

 廃校の多様な活用法を実践してきた学園だが、設立当初から大きな目標に据えているのは、移住者の定着や企業の誘致だという。「多彩な文化を発信するキーとなる場所が、身近にあるということを知ってもらい、鞍手町の魅力が伝われば」と重松社長。廃校を利用した地域活性化という、未知の分野への挑戦が続く。


西日が差し込む体育館。学園は、様々な可能性を模索している



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