子どもも大人も楽しめる「西勝寺えほん図書館」が柳川に誕生

図書館でお気に入りの絵本を紹介する橋本さん
福岡県柳川市の三橋大谷幼稚園園長だった橋本立子さん(77)が、同市三橋町吉開に、誰でも利用できる「西勝寺えほん図書館」を開いた。集めた絵本は約2000冊に上る。開設を思い立ったのは、「絵本は子どもの知識と心の成長につながる。大人も楽しめる」という長年携わった幼児教育の経験からだった。
「誰一人も取り残さない」
橋本さんが在職していた約30年前、園で全盲の男児を受け入れることになった。同園は「誰一人も取り残さない」ことを教育方針に掲げており、トイレの使い方や、玄関、廊下から教室までの行き方、自分の靴箱、道具入れの場所などを手で触れればわかるようにした。放課後に入園前の導入教育を繰り返し、半年後、男児の通園が始まった。
男児は、体が弱った竜が、みんなの幸せを願って自分の体を投げ出す、宮沢賢治の作品を題材にした戸田幸四郎さん(2011年に死去)の「竜のはなし」を夢中になって聞いていた。しかし、他の園児のように絵を見ることはできない。
橋本さんは「男児は手で絵を見ることはできる。原画を触らせたい」と戸田さんに直談判。趣旨を理解した戸田さんは、けがをして飛べなくなったツルを仲間が助ける「百羽のツル」の原画を寄贈してくれた。
20年ほど前には、集団生活になじめず話さない子どもに、戸田さんの「赤ちゃん絵本セット」を見せて過ごすうち、生き生きとした表情でおしゃべりをするようになったこともある。
心癒やす居心地良い空間
図書館は5月、夫の融宣(ゆうせん)さん(78)が住職を務める西勝寺の隣接地に開館。木造平屋の47平方メートルで、費用は退職金を充てた。館内のテーブルやウッドデッキ作り、外構工事などは融宣さんがやってくれた。蔵書は在職中に集めたり、閉園した保育施設から寄贈を受けたりした。戸田さんの原画や作品を集めたコーナーもある。
橋本さんは「卒園生やその家族に再会できることも楽しみ。絵本に囲まれた居心地のいい空間で心を癒やしながら楽しんでほしい」と期待している。訪れる際は、事前に西勝寺(0944-72-8793)に連絡してほしいとしている。