柳川藩主立花邸「御花」 文化財の未来を照らすCFに初挑戦

夕暮れ時の松濤園。照明設備を改修し、夜の景観をより美しく(写真はいずれも御花提供)

記事 INDEX

  • 国の名勝「立花氏庭園」
  • 旅館創業75年に向けて
  • 目標金額に2日で到達!

 福岡県柳川市の旅館・柳川藩主立花邸「御花(おはな)」が、敷地内の庭園「松濤園(しょうとうえん)」の照明設備を改修する資金を募るため、4月23日にクラウドファンディング(CF)を始めました。国の名勝に指定された敷地は”地域の財産”でもあり、御花は「夜の美しいライトアップで文化財の魅力をより高めたい」としています。

国の名勝「立花氏庭園」

 柳川の名物「川下り」の終着点近くにある御花は、柳川藩主だった立花家の屋敷です。1738年、5代藩主の立花貞俶(さだよし)が、側室や子どもたちの住まいとして建てました。明治期に14代当主・寛治(ともはる)が「松濤園」「西洋館」「大広間」など、現在の御花を構成する庭園や建物を築き、戦後は料亭旅館に姿を変えました。


江戸時代に藩主の別邸として始まり、明治期に伯爵邸として整備された(立花家史料館所蔵)

 1978年に国の名勝に指定された松濤園は、座敷からの眺望を楽しむ日本庭園で、100畳ほどの大広間から、石を島に見立てて配置した大海原のような池を観賞します。池を囲むように200本以上のクロマツがあり、庭石や石灯籠などが並びます。

 2011年には、その芸術性や観賞上の価値の高さなどから、松濤園を含む敷地全体(約2万3000平方メートル)が「立花氏庭園」として名勝に追加指定されました。


advertisement

旅館創業75年に向けて

 2025年5月には、旅館創業75周年を迎えます。この節目に向け、老朽化した宿泊棟を改装しており、24年7月には客室の内装工事に着手します。工事の間、料亭の営業は続けるものの、旅館は一時休業して25年1月に再開する予定です。


クロマツの美しさが堪能できる庭園

 一連のリニューアルを進める中で、御花の魅力をさらに高めようと、庭園の照明設備も改修することに。御花によると、照明が壊れていたり、ライトの数が不足していたり、庭全体が暗い印象で本来の美しさを引き出せていないといいます。


夜の御花。照明が少なく、全体が暗い印象に

 このため、照明デザイナーに依頼して夜間の演出を見直しました。行灯(あんどん)のような柔らかい明かりを増やし、池に配置された岩や周辺の樹木をしっかり照らすスポットライトを増設します。


池の周囲の照明イメージ

 照明の改修は夏前から始まります。庭園の整備が終わった際には、特別に夜間拝観イベントを行う計画で、御花は「地元・柳川のみなさまや、観光のお客さまなど多くの方々に、文化財の夜の魅力を楽しんでいただきたい」としています。

目標金額に2日で到達!

 CFサイト「READYFOR(レディーフォー)」で寄付を呼びかけており、6月18日23時まで続けます。サイトでは、庭園の魅力を多くの人に伝えたいとの思い、御花を守り続ける決意のほか、立花家の物語と御花の歴史などを紹介しています。

 寄付は5000~100万円の20種類から選べます。返礼品付きのコースでは、5000円の寄付で記念ポストカードセット、3万円で御花ペア食事招待(うなぎのせいろ蒸し特上)、30万円でペア宿泊特別招待(2食付き)などを用意しています。


御花のCFサイトの画面

 当初は300万円を目指していましたが、開始2日目で100人以上の支援が得られ、目標金額を突破しました。予想を超える反響を受けて、改修の範囲を「東庭園」にも広げ、目標を600万円に引き上げたCFは5月9日時点で約550万円が寄せられています。

 サイトでは「素晴らしい歴史、景観を多くの人々に知っていただきたい」「御花で結婚式しました。これから何十年も何百年も心温まる場所として残り続けてほしい」といった支援者のコメントが紹介されています。


月明かりに照らされる庭園。自然と調和したライトアップで、さらに大きな感動体験を

 「庭園を照らす月明かりをはじめ、自然と調和し、文化財の雰囲気を壊すことのないライトアップにしたい」と、CFを担当する金原梨奈さんは話します。「文化財を民間単独で維持していくのは難しく、たくさんの共感をいただけてうれしい。100年先を考えながら、みなさまの思いの詰まったこの場所を守っていきたいです」


advertisement

この記事をシェアする