できたらいいな!をカタチに ECサイト「乗富実験室」誕生
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ECサイト「乗富実験室」のトップページ
水門製作の技術を生かして、自由な発想でものづくりに挑戦しよう――。福岡県柳川市の水門メーカー・乗富鉄工所は、社員の創意工夫から生まれた“新商品”を販売するECサイト「乗富実験室」を開設しました。「こんなものができたらいいな」をテーマに、丈夫なキャンプ用品や家具など、ジャンルにとらわれない製品を提案します。
社員のやりたい!から商品化
1月6日にオープンした乗富実験室では、同社の職人から事務職員まで社員一人ひとりが、「こんなこといいな」「できたらいいな」とひらめいたアイデアをカタチにして販売します。
サイトには、水門に用いるステンレス素材で作ったブックエンド「ツクルホンタテ」(税込み3800円)、傘などを立てかける「ツクルスタンド」(1万3800円)を出品。ほかに、同社で子ども向けワークショップを開く際の組み立てキットとして考案したおもちゃのゴム銃「ツクルシューター」(4400円)もそろえました。
ホンタテやスタンドは、同社の高い溶接技術を使い、長く使用してもさびたり塗装が剥がれたりしにくい仕上がりとなっています。
金属製のプランターケースも開発中とのことで、近く出品される予定です。水門メーカーの技術力を注ぎ込んだ製品で、水に強く壊れにくいものを目指しているそうです。今後も、出品数を少しずつ増やしていきます。
サイトは、社員によるアイデアを発表する場でもあり、その製品が社会に受け入れられ、新たな価値を提供できるのか、“実験”と位置付けて見守っていきます。
培ってきた技術で未来に挑戦
1948年創業の乗富鉄工所は、福岡県内最大規模の水門メーカーです。本社を置く柳川市は、「掘割」と呼ばれる水路が張り巡らされ、水郷として知られています。
社員は約80人。主力の水門はすべてオーダーメイドで、防災や農業といった用途、川幅や設置場所などによって形状が異なります。製造から据え付け工事まで、一貫して行える技術と職人を擁する同社ですが、近年は、水門の素材がステンレスに変わって製品の寿命が延びたことなどから、受注ペースが鈍っているそうです。
将来にわたって安定的に仕事を確保していくため、同社は長年培ってきた技術力を生かして新たな事業を開拓できないか、模索を始めました。
鉄工職人の呼び名は”メタルクリエイター”に改め、社外のデザイナーや異業種とコラボしたプロジェクトをスタート。新ブランド「ノリノリライフ」を創設して、3年ほど前からキャンプ用品や雑貨などの開発を進めてきました。
水門に用いるステンレスのメッシュ素材を使い、ゆらぐ炎を真横から眺められるたき火台や、大川市の家具メーカーとコラボした鋼パイプのデスクや椅子などを作ったところ、多くの反響が寄せられたそうです。このうち、たき火台は世界三大デザイン賞の一つとされるドイツの「iF DESIGN AWARD 2024」に輝きました。
今回のサイト開設には、技術者に限らず多くの社員が商品開発に参加しやすくなるように、社内の雰囲気を醸成する狙いもあります。同社の担当は「面白いと思える商品に出会えるサイトに育てていきます。ものづくりの楽しさや新しい価値を社会に提案していきたい」と話しています。