りんご飴と「福祉」に全力で挑戦 宗像でカフェ併設の施設を開所

人気のりんご飴を製造・販売するオールアウト
記事 INDEX
- 赤間駅近くに立地
- 退路を断って進む
- 人気の品で工賃増
りんご飴(あめ)などのスイーツとランチを提供するカフェを備えた就労継続支援B型事業所「オールアウト」が4月5日、福岡県宗像市にオープンしました。福岡市早良区で営業していた人気のりんご飴店「あっぷりてぃ 藤崎店」(2月閉店)を移転する形で開設。関係者は「障害を持つ人が働く場を広げる一歩になれば」と願っています。
赤間駅近くに立地
「藤崎店での売る力をB型事業所で発揮すれば、利用者さんの工賃アップにつながるはず」。宗像市田久にあるオールアウトのカフェスペースで、運営会社D.L.S(福岡市)の社長・梶本真佑さん(43)は力を込めました。
オールアウトは、JR赤間駅から南へ徒歩10分ほどの、2階建て建物の1階部分にあります。りんご飴やランチを作る調理スペースと、16席を備えるカフェスペースがあり、施設面積は計約90平方メートルです。
聴覚、知的、精神の各障害を持つ人の受け入れを進める考えで、定員は20人。職業指導員・生活支援員ら4人がサポートし、適性に応じてりんご飴などの調理のほか、レジや配膳といった接客にあたってもらう計画です。
すでに、聴覚、精神障害の2人の雇用が決定。マニュアルなどの整備を進めて、4月中旬から本格的に受け入れる予定です。
退路を断って進む
B型事業所に挑むことにしたのは、藤崎店での経験からです。同店は、手話での接客も行うなど難聴者が一般就労で働ける店として、2022年4月にオープン。梶本さんがこだわり抜いて作ったりんご飴は、月2000個以上売れるほど人気で「経営は順調」(梶本さん)でした。
妻と長女が難聴で、かねて難聴児の放課後等デイサービス施設を運営している梶本さん。「子どもたちに将来働くイメージを広げてほしい」との思いもあり、藤崎店は福祉事業所ではなく、一般就労できる健常者や障害者を雇用してきました。
ただ、一般就労が“壁”となり、「店で働きたい」と望む障害者を断らざるを得ないケースも少なくありませんでした。「これでいいのか」という思いが膨らむ中、工賃アップに成功している複数のB型事業所を視察する機会があり、「自社製造でブランド力と販売力が高いことが工賃アップのカギ。うちにはそれがそろっている」と、事業所の開設を決断しました。
なお、宗像市は、藤崎店に長く勤めてきた従業員が住んでいた縁もあり、移転先に決まったそうです。人気店を閉めて退路を断ち、店名の通り全力(オールアウト)で臨む構えです。
人気の品で工賃増
厚生労働省のまとめによると、B型事業所の全国の平均工賃は月額約2万3000円(2023年度)。オールアウトはそれを上回る月額3万5000円をまず目指し、徐々に引き上げていきたい考えです。
利用者が取り組みやすいよう、作業工程はりんごを拭く、串に刺す、砂糖の準備をする、飴をつける、袋に入れる、など細分化して提示。時給400円の軽作業からスタートして、難易度の高さにより10~50円の増額をしていくそうです。
カフェではりんご飴(1本税込み550円)やアップルパイ(1個350円)、いちご飴(1本400円)などのスイーツのほか、ランチでからあげ定食(900円)、とんかつ定食(1000円)を提供。職業指導員として勤める見城愛佳さん(26)は「地域の方々にたくさん来てもらい、食事や休憩はもちろん、障がいを持つ人と交流してもらったり、思い思いに過ごしてほしい」としています。
本格始動に向けて「利用者さんに応じて、少しずつ任せる作業を増やしていき、幸せややりがいにつなげたい」と見城さん。梶本さんは「店の工賃アップを進めていく。利用者さんには、ここを踏み台にして別の勤務先へ一般就労する、といったステップアップにつなげてほしい」と夢を描いています。
◆店舗概要
【所在地】宗像市田久4-1-12
【営業時間】11~17時(ランチは15時まで)
【定休日】水・日曜
【公式情報】インスタグラム
【問い合わせ】
・メール(appretty0924@gmail.com)
・電話(070-1943-0242)