今も現役!飯塚の93歳「ながのばあちゃん」が農業で全国表彰
記事 INDEX
- 90歳を超えた今も
- 60歳で始めたこと
- 人の命を守る仕事
テレビ出演や料理教室で「ながのばあちゃん」として親しまれている福岡県飯塚市の農業、長野路代さん(93)が3月、農林漁業分野で活躍する女性の一人として、全国表彰されました。「身に余る賞。これからも(若い世代に)役立つよう、地域で受け継がれてきたものを伝えていきたい」と喜びを語りました。
90歳を超えた今も
農山漁村で女性の活躍を促そうと、JA全国女性組織協議会や全国農業会議所などでつくる農山漁村男女共同参画推進協議会(東京)が主催する2023年度の「農山漁村女性活躍表彰」で審査委員特別賞を受賞しました。
17年度に現行の形となった女性活躍表彰事業で、この賞を受けたのは長野さんが初めて。運営側によると、同事業は近年の活躍に光が当てられるケースが多い中、長野さんは長年にわたる農業分野での貢献と、90歳を超えても現役で活動していることに「敬意を表して」、特別賞の贈呈が決まったそうです。
長野さんは3月7日に東京都内で開かれた表彰式に出席し、賞状を受け取りました。
60歳で始めたこと
長野さんや同表彰事業の資料などによると、飯塚市(旧・筑穂町)で生まれた長野さんは、地元の農家に嫁いで農作業を続けてきた自他共に認める「生粋の農業人」。柿や米を生産し、長男・文彦さん(68)が結婚して孫が生まれてからは、洋裁の内職などで家計を支えました。
60歳になる頃、町議としても地域に尽くした夫を亡くし、農産品を用いた加工品づくりを本格的に始めます。地元のイベントで焼き肉のタレやドレッシングを提供したところ好評で、60歳で食品加工グループ「野々実会(ののみかい)」を仲間と結成しました。
自家製の唐辛子やタマネギを使った加工品を手がけ、「梅高菜」や「ながのばあちゃんの白おこわ」など5品は、飯塚市の「いいづかブランド」に認定。市によると、21年度の創設から計20事業者の31品を認定している同ブランドで、野々実会の品数は最多とのことです。
人の命を守る仕事
このほかにも、農業技術の普及などを図る県の施設で講師を務めたり、総合食品メーカーの久原本家(久山町)が営む「御料理 茅乃舎(かやのや)」のコース料理の一品を監修したりと、多方面で活躍してきた長野さん。文彦さんのサポートも受けながら会の活動を続け、唐辛子やタマネギなどを育てて加工品をつくっています。
4月下旬には御料理 茅乃舎のスタッフや利用客らが参加するタケノコ掘りのイベントが飯塚市内で企画されているほか、県男女共同参画センター「あすばる」が春日市内で開く女性向け研修(9月)と親子向け食育教室(11月)の講師を務める予定です。
3月21日には、県庁を訪問して服部誠太郎知事に受賞を報告。「梅高菜」に関連して「先代から(高菜は)桜の花が咲いたら収穫する、と教わった」などと紹介し、「(地域で培われた技術や知恵を)伝えていくことが私の役目」と話しました。
梅高菜入りおにぎりを試食した服部知事は「優しい味ですね」とうなずき、「今風にいえば長野さんは女性農業者の『ロールモデル』。(60歳からの活躍は)農業者に限らず、すばらしい」とたたえました。
長野さんは取材に対して「かつて、農業は『したくない』『子どもにもさせたくない』と思っていたが、今は『人の命を守る仕事』と自信を持っている」と強調。農業の魅力は「太陽と共生しながら(作物を)育てていく面白さ」と語ります。
「せっかくの命。役に立つことをしゃべろうと思っている。若い世代に伝えたいことはいっぱいある」と長野さん。これからもたくさんの料理やことばで、農業や食べ物、そして地域の魅力を教えてくれそうです。