うまい!安い!売り切れ御免! 若松トマトの自販機が話題に

知る人ぞ知る人気。ひらやまふぁーむのトマト自販機

記事 INDEX

  • 形はふぞろいでも…
  • 遠方からも車が続々
  • 感謝の手紙が励みに

 北九州市若松区の緑が広がる風景の中に、ポツンと置かれたトマトの自動販売機。「こんな場所にどうして?」と思わず二度見してしまう自販機には、トマトを買い求める人が次から次にやって来る。「新鮮、濃厚、何より安い」と評判なのだという。

形はふぞろいでも…


もぎたてのトマトを手に笑顔の平山さん


 自販機を管理しているのは「ひらやまふぁーむ」の平山祐次さん(39)。響灘緑地・グリーンパーク近くの約1.5ヘクタールで、ビニールハウスを中心に農業を営む。11月から7月はトマトをメインに、ほかの時期は旬のナスやキャベツ、大根などを栽培している。


広いハウスの中では、根元に栄養分を与える作業が続いていた


 収穫した野菜の9割は市場に出荷するが、サイズや形がふぞろいで流通しにくいトマトもある。「形は整っていなくても、おいしさは同じ。若松トマトの魅力を知ってほしい」。収穫状況に合わせた不定期営業だが、前日にとれたトマトをロッカー型の自販機に入れて2020年末から直売するように。時期による違いはあるものの、ふぞろいのトマトは約500グラムを200円、おすすめのものは400円といった値段で販売する。


ロッカーには200円から400円のトマトが並ぶ


 始めた頃は苦戦が続いた。宣伝していなかったこともあり、初日の売り上げは2袋、700円だったという。それでも地道に取り組み、今では人気のスポットになった。


濃厚な味わいが評判


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遠方から車が続々

 自販機による販売を始めたのは、コロナ禍が深刻になった時期でもあった。「非接触」を重視する人たちに自販機が注目されたこと、「もうけ優先ではない」と焦らずにSNSなどで営業日や収穫状況を発信し続けたこと、そして何より「安くて、おいしい」ことが消費者に受け入れられ、人気がじわじわと広がっていった。


今や人気スポットになった自販機


 今では山口県や福岡市から訪れる客もいるという。昼過ぎには完売する日も多く、1日で2万~3万円の売り上げに。自販機のトマトは1日に2、3回ほど補充するが、市場への出荷作業にも追われ、「タイミングが合えばラッキーと思ってもらえれば…。 お裾分けという感じで受け止めてほしい」と申し訳なさそうに話す。


車に乗って自販機のトマトを買い求めにやって来る


 とくに土日は客が多く、用意できるトマトの量が少ないと、わずか1時間ほどで完売になることもあるそうだ。

感謝の手紙が励みに

 天気に恵まれた5月中旬の平日。SNSで開店日であることを確かめ、10時の営業開始に合わせて訪ねてみた。自販機の周辺には10台あまりの車がすでに止まっていた。


開店時、平山さんがトマトを自販機に入れる間もなく、次々と売れていく


 様子を見ていると、平山さんが箱のトマトを自販機に入れるより先に、客が箱の中に手を伸ばして、次々と購入していく。常連客だろうか、「ここに来たら3000円分は買っちゃうからねぇ」というやり取りも聞こえた。


「ここのトマトしか食べない」というファンもいるそうだ


 「知り合いがくれたトマトがとてもおいしかったので、場所を教えてもらって来ました」と話してくれたのは、福岡県中間市から訪れた60代の夫婦。「人気だから、もう完売しているかも、と不安だったけれど買えてよかった」と2袋のトマトを大切そうに持って、笑顔で車に戻っていった。


緑に囲まれた場所にある自販機


 「とてもおいしかったです。長く続けてくださいね」「トマト嫌いだった子どもたちがトマトを大好きになりました」――。商品が売れて空になったロッカーの中に、感謝の手紙や子どもが描いたトマトの絵が入れられていることもあるそうだ。


「自販機を通じて、お客さんとのつながりを感じます」


 無人販売ではあるが、自販機を介して、人とのつながりを感じるという平山さん。「とても励みになるし、ありがたい。何かお返しができたらいいのだけれど、誰が書いてくれたのか分からないので…」と白い歯をのぞかせた。


ロッカーの中をじっと見ながら品定め


 収穫量によって週に2~5回ほど開店し、営業する日はツイッターなどで知らせている。自販機は100円硬貨専用なので、用意をお忘れなく。



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