トマトがカレーで“恩返し” 北九州市で子ども食堂を支援へ
記事 INDEX
- 売り物にはならないけれど
- 相性がよいのはサツマイモ
- “味にうるさい”市長も笑顔
北九州市の大学や企業がタッグを組み、地元産のトマトを使った新たなレトルトカレーを5月に発売しました。表面についた傷などのため店頭には並ばないトマトを活用した商品で、「トマトのおんがえしカレー」と命名。収益の一部は子ども食堂の支援に充て、好循環を生み出していきたい考えです。
売り物にはならないけれど
「食品ロスをどうにかしたい……」。トマトを提供する北九州市若松区の響灘菜園の猪狩英之社長(46)はかねて、そうした思いを抱いてきました。
同社は年間3000トンのトマトを生産しますが、その約3%にあたる100トンほどは、表面の傷や色の問題から売り物にできないといいます。従業員が持ち帰ったり、堆肥(たいひ)にして使ったり、やむなく廃棄することもありました。
こうした課題を知った市や九州栄養福祉大などが協力し、2年ほど前から加工品の開発をスタート。それぞれ、子ども食堂の支援を通じてつながりがあり、子どもたちもおいしく食べられるようなレトルトカレーを目指すことになりました。
相性がよいのはサツマイモ
完成したレトルトカレーは、1袋あたり中玉トマト1個半ほど(約100グラム)を皮ごと使用。酸味を抑えて、まろやかな味わいに仕上げています。
レシピを考案したのは九州栄養福祉大の学生たち。コロナ禍のため対面で話し合う機会が限られる中、サツマイモで甘みを加えるなど試行錯誤し、味をととのえました。当初から関わってきた4年の緒方美優(みゆう)さん(21)は「いろんな人との関わりでできた商品。野菜嫌いな子どもにも食べてほしい」と話します。
パッケージのデザインなどは、西日本工業大の学生らが担当。「子どもたちに温かみを感じてもらえるよう、絵本風の図柄にしました」と、4年の仲宗根盛太さん(21)は明かします。
レトルト食品製造業のマル商(北九州市)が参画し、製品化につなげました。
“味にうるさい”市長も笑顔
北九州市役所で5月24日に開かれたお披露目会では、「カレーにはちょっとうるさい」と自称する武内和久市長が試食しました。
過去に、マツコ・デラックスさん出演のテレビ番組で、自作のみそ汁を紹介したこともある武内市長。「酸味と甘みのバランスがいい。ほっこりする味」と笑顔で平らげ、「お世辞なしでおいしい」と味に太鼓判を押しました。
子ども食堂ネットワーク北九州の大村美智子代表(64)は「支援の輪を広げてもらい、ありがたい。野菜が嫌いな子どもも食べられるよう工夫されており、子ども食堂でも配ったり提供したりしていけたらうれしい」と話しました。
「トマトのおんがえしカレー」は内容量180グラム。極東ファディ(北九州市)では、福岡県内外で運営する食品スーパー22店で、税込み378円で販売しています。
関係者は今後、生産量を徐々に増やし、販路も広げていきたい考えです。