豊後高田・昭和の町が門司港に 「レトロのあそびとおもちゃ展」

世界で3体しかないというカネゴンのフィギュアなどが展示された会場
記事 INDEX
- 駄菓子屋の夢博物館
- ファン垂涎の収集品
- 世代を超え"小旅行"
オープン30周年を迎えた北九州市門司区の門司港レトロ。その中核施設で、関門海峡の歴史や文化を紹介する体験型博物館・関門海峡ミュージアムを会場に、昭和の"記憶"へと誘う企画「レトロのあそびとおもちゃ展」が8月31日まで開催されている。
駄菓子屋の夢博物館
展示されているのは、古き良き時代の玩具など約5000点。「昭和の町」として知られる大分県豊後高田市で、「駄菓子屋の夢博物館」館長を務める小宮裕宣さん(76)のコレクションが中心だ。会場では「懐かしいねぇ」というつぶやきや、「これが、おじいちゃんが話していたダイヤルを回す電話かぁ」といった声が聞かれた。
小宮さんが全国を回り、約50年前から集めてきた貴重な品々は40万点以上に及ぶ。駄菓子屋の夢博物館で展示しているのは6万点ほどで、収集品の多くはかつて大地主の米蔵だったという倉庫に眠っているそうだ。
今年は昭和100年の節目。「レトロつながりでコラボしたい」と、ミュージアム側が小宮さんに打診し、「渡りに船。おもちゃも自分たちの出番を待っているはず」とトントン拍子に話が進んだという。
大型客船をイメージした館内に入ると、大正期の門司港の街並みを再現した「海峡レトロ通り」が広がる。バナナのたたき売りや路面電車など、国際貿易港として栄えた港町のにぎわいが通りの両側を彩る。その奥にあるのが、今回のイベント会場だ。
ファン垂涎の収集品
入り口でまず目に飛び込んでくるのは、昭和の名車「スバル360」。昭和40年代初期のモデルで、小宮さんが6、7年前まで通勤で使っていたという。車検は切れたものの、「少し手を入れれば今でも走れる」とのことだ。
会場には、デパートの屋上遊園地にあった観覧車の模型、ウルトラマンやゴジラといった作品に登場したヒーローや怪獣のフィギュアなどが並ぶ。中でも、ウルトラマンシリーズで人気のカネゴンは周囲が暗くなると光を発し、小宮さんによると「世界に3体しかない」という貴重なものだそうだ。
昭和のCM音楽が流れる会場の奥に足を進めると、50~60年前の駄菓子屋を再現したコーナーがあり、子どもたちを夢中にさせたヒーローたちのカードがガラスケースに収まっていた。往年のアイドルたちのレコードジャケットなども並び、懐かしのヒット曲を思い起こさせてくれる。
イベントの目玉の一つが「レトロのお宝オークション」だ。出品されるのは、小宮さんの大切なコレクションで、ブリキ製の零戦やペコちゃん人形など、世間になかなか出回らないファン垂涎(すいぜん)の品が登場する。
世代を超え"小旅行"
元々、若いファミリー層を主なターゲットにしているミュージアム。若い世代に昭和の文化がどこまで受け入れられるだろうかとの不安もあったが、両親や祖父母の時代の品々に「写真映えする」「意外性がある」といった声が寄せられているという。
北九州市小倉南区の白石みどりさん(70)は、小学4年の孫娘と一緒に会場を訪れた。孫娘が夢中になっていたのは、駄菓子屋の前に置かれたダイヤル式の赤電話。受話器を耳に当てて、少し離れた場所にいる白石さんと“電話ごっこ”を楽しんだ。
「おばあちゃん、どっちが長くできるか競争しよう」。お手玉の体験コーナーで明るい声が聞こえた。3、4回で落とした白石さんに対して、孫娘は10回以上続いた。「あら上手ね、すごい!」。2人の周囲がほっこりした雰囲気に包まれた。
「関門海峡をまるごと楽しむ体験型博物館」を掲げるミュージアムは、2019年に大幅な改修を行い、吹き抜け部分に高さ9メートル、幅18メートルの国内最大規模のスクリーンが設置された。「壇ノ浦の戦い」の歴史絵巻、関門海峡の海中を舞台に「光と音楽の海」をテーマにした映像などが流れる。
4階の「プロムナードデッキ」(無料)は大正・昭和の豪華客船をイメージしたラウンジスペースで、壁一面がガラス張り。岸壁に停泊する大型旅客船や海峡を行き交う船舶を眺めながら、お茶を楽しむことができる。
タイムトンネルを思わせるような青く染まった空間をエスカレーターで上ると、屋外の展望デッキへ出られる。心地よい潮風を感じながら、関門海峡の眺望を楽しむ家族連れの姿があった。