平和への思い乗せ… 北九州市の救急車を内戦下のスーダンへ

スーダンに贈られる救急車の前で写真撮影に臨む中学生たち(KDS提供)
記事 INDEX
- 売却予定の車両 JCが譲渡を嘆願
- 中学生が描いたステッカーで彩る
- 「思いと行動 現地の人々の力に」
内戦が続くアフリカ北東部スーダンの医療態勢を支援しようと、北九州市から救急車2台が同国政府へ贈られる。北九州青年会議所(JC)が市消防局に働きかけ、現地で医療活動を展開する同市のNPO法人「ロシナンテス」(川原尚行理事長)を通じて実現させた。6月29日に贈呈式が行われた車両は、市内の中学生らが友好の思いを込めて作成したステッカーや横断幕とともに海を渡る。
売却予定の車両 JCが譲渡を嘆願
スーダンでは2023年4月、国軍と準軍事組織の戦闘が勃発。ロシナンテスの日本人スタッフは退避を余儀なくされ、外務省は現在もスーダン全土に「退避勧告」を出している。現地では病院が破壊され、救急車が奪われる被害が出ており、救急車が失われた地域ではロバで患者を搬送するケースもある。避難者が多い村落の診療所では、人手も物資も足りない状況だという。
JCが寄贈するのは、市消防局の車両。一定期間を過ぎて通常なら売却されるところ、JCが譲渡を求める嘆願書を提出し、同局は「国際貢献の一助になれば」と無償で応じた。同局の車両は、11年にも同様の経緯でスーダンに贈られている。今回は、ロシナンテスが支援金を活用して輸送する。
中学生が描いたステッカーで彩る
救急車は、ステッカーで彩られてスーダンに向かう。作業を担ったのは、JCの関連団体で、青少年育成事業を行う一般社団法人「北九州ドリームサミット(KDS)」に参加する同市内の中学生たち。6月上旬、JC事務局に約20人が集まり、約4時間かけてステッカーのデザインを考えたり、救急車と一緒に贈る横断幕を準備したりした。ステッカーには、平和の象徴のハトや北九州市花のヒマワリ、スーダン国花のハイビスカスをあしらった。
生徒たちは5月、ロシナンテスの川原理事長の講演を聞いた。内戦による被害や日本とは異なる医療環境に胸を痛め、救急車を贈るプロジェクトに協力しようと思い立った。小倉日新館中2年の生徒は、「日本では治療を受けるのが当たり前だが、現地ではそうでない。活動を通してスーダンのことを伝えたい」と力を込めた。
「思いと行動 現地の人々の力に」
ロシナンテス広報担当の立花香澄さんは、「スーダンの内戦は『忘れられた紛争』とも言われる。日本の中学生が思いを巡らせて行動してくれることは、現地の人々の力になるはず」と喜ぶ。
贈呈式は小倉北区の北九州メディアドームで行われた。JCの菅原健二副理事長は「一度は役目を終えた救急車が、北九州の子どもたちの思いを受けて現地で役立ってほしい」と話している。