ずっと一緒に! 人気者の名を冠した「小倉高峰パンダ公園」

小倉高峰パンダ公園のシンボル、パンダの石像

記事 INDEX

  • 住民の要望を受けて
  • 遊び心で隠れキャラ
  • 若者の注目も集める

 北九州市小倉北区に「小倉高峰パンダ公園」と名付けられた憩いの場がある。パンダとのゆかりはなさそうな北九州市の閑静な住宅街にある小さな公園。設計担当者の遊び心から、園内にはパンダの意匠がちりばめられ、”隠れパンダ”を見つけることを楽しみに訪れる若い人たちもいるようだ。

住民の要望を受けて

 パンダといえば、和歌山県白浜町のテーマパークで飼育されているジャイアントパンダ全4頭が、6月下旬に中国に返されるとのニュースが記憶に新しい。国内で飼育されるジャイアントパンダは東京・上野動物園の2頭のみになり、この2頭も2026年2月には中国への返還期限を迎える。1972年にやって来た「カンカン」「ランラン」以来、多くの日本人に愛されてきたパンダの姿が国内から消える可能性がある。


公園の入り口に敷かれたブロック。よく見るとパンダの顔が


 北九州市の担当者に尋ねたところ、小倉高峰パンダ公園は、ちょうどパンダが来日した1972年に整備されたという。とはいえ、当時の公園名に「パンダ」の冠はなく、小倉高峰2号公園という名称だった。


公園は半世紀以上前に造られた


 2002年、公園の再整備にあたり、市と地域住民による話し合いの場がもたれた。その際、かつて園内にシンボル的なパンダの遊具があった経緯で、地元では「パンダ公園」の愛称で親しまれていることが分かった。


開園当時からの遊具も健在


 「パンダにちなんだ遊具をまた置いてほしい」「パンダの名前を園名に入れてもらえないだろうか」といった要望が住民から寄せられた。現在は経年劣化のため撤去されたが、小さい子どもがまたがって楽しむパンダの遊具を設置し、名称も小倉高峰パンダ公園に改められることになった。


地元の要望を受けて小倉高峰パンダ公園に


 「地域にすごく大切にされている公園だな」。設計担当として、当時の話し合いにも参加した北九州市みどり公園課の西井田智枝さん(57)は、今もその印象が強く残っているという。「そんなことをしたら危ないよ」――。大人たちが、よその家の子どもにも積極的に声をかけ、地域全体で見守っている光景を度々目にしたそうだ。


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遊び心で隠れキャラ


道路に面した花壇では季節の花が彩りを添えている


 地域の人たちが、公園ができて間もなく整備した花壇は、現在も訪れる人たちを楽しませている。手入れの行き届いたささやかな花畑には、バラなどの季節の花が咲いていた。


「パンダ公園なのだからクマザサも」


 園内を彩る植物の中にはクマザサも。パンダ公園と呼ばれるようになった頃から、パンダの好物が植えられているそうだ。地域では毎月第2日曜に、住民ら20人ほどが集まり、園内を掃除している。


公園を彩るバラの花


 地域に愛されている様子を感じていた西井田さん。「隠れパンダも登場させよう」と遊び心が芽生えたと振り返る。「気づかない人が意外に多い」という隠れパンダ。一つは足元にあり、白とグレーのブロックでかわいい顔が描かれている。


西井田さんの遊び心から生まれた


 とくに見つけにくいのは、車止めの黒いブロックだ。歳月を経て色あせている部分もあるが、パンダがしっかりと描かれている。園の入り口付近には、子どもたちを見守っていた地元のお年寄りの寄付により、パンダの石像が設置されている。


車止めにもパンダの姿が


若者の注目も集める


 公園ができた頃から近くに住んでいる平田隆子さん(87)によると、10年ほど前には、小学生らが校区を歩いて地元の魅力を再発見するイベントが開かれていたという。「何頭のパンダが隠れているでしょう?」――。公園でのクイズは子どもたちに好評だったそうだ。


遊具の先に見えるパンダの石像


 最近も、若い人たちが園内の隠れパンダを探しに訪れて、SNSに投稿して楽しむ姿が見られるという。西井田さんの元に、「パンダ、見つけましたよ」との声も寄せられるとのことだ。


SNS映えする、ちょっとした人気スポットだ


 パンダの遊具は、小さな子どもがまたがって前後に揺れるタイプなどがある。福岡市中央区の鳥飼公園にも芝生の広場にパンダの遊具が置かれている。福岡市には1700あまりの公園があるが、パンダの名前が正式に付けられた公園はないそうだ。


芝生を駆け回っているようなパンダの遊具(鳥飼公園で)


 一方、北九州市には719か所あり、いくつかの公園には小さなパンダの遊具や置物がある。小倉南区の山手三丁目東公園の入り口にはパンダのオブジェがあり、公園のシンボルとして親しまれている。北九州市によると、正式名称にパンダが付くのは市内で小倉高峰パンダ公園だけとのことだった。


公園の入り口で迎えてくれているよう(山手三丁目東公園で)


 公園のパンダの目線の高さに合わせて望遠レンズでのぞいてみると、愛くるしいパンダの顔が画面いっぱいに広がった。塗装がはがれかけているその顔は、どこか悲しげで、あふれる涙をためているようにも見えた。近い将来、日本を去る可能性がある“動物園のアイドル”の姿と重ね合わせ、しばらくその場にたたずんだ。


どこか悲しげで、あふれる涙をためているようにも見えた(山手三丁目東公園で)



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