産後うつを瞑想で予防しよう!大木町がマインドフルネス事業

講師の指導を受けながら瞑想する大木町の女性たち
産後うつを予防しようと、福岡県大木町は2025年度、瞑想(めいそう)法を活用した「マインドフルネス」で妊産婦の心身の健康を目指す事業を始めた。新興企業と連携したオンライン講座で、迅速な支援が難しい夜間や休日でも受講できる。町は「産後まもない母親らに寄り添い、孤立を防ぎたい」としている。
<マインドフルネス>
初期の仏教瞑想に由来した脳や心を休息する方法。大木町が事業委託したメロンによると、ストレス軽減や感情のコントロールに効果があり、産後うつのリスクを減らすとする海外の研究もあるという。産後うつは体やホルモン、「赤ちゃんの世話を親として十分できていない」といった育児の心理的・社会的な変化が要因とされ、主に産後6~8週の産褥(さんじょく)期に発症する。深刻な場合、自殺や無理心中などにつながるケースもある。
町民は無料で利用可能
「大きく息を吸って、吐いて。自分が今、この場所にいることに意識を向けてみましょう」。4月上旬、町の子育て交流センター。オンラインで講師がスクリーン越しに呼びかけ、出産した女性5人が瞑想や深呼吸、ストレッチに取り組んだ。
今している体験を意識することで、家事や育児に追われがちな思考を止め、自分の気持ちを客観的に見つめてもらう。講座は企業向けにマインドフルネスの研修などに取り組む新興企業「メロン」(東京)が提供している。
参加した同町の保育士の女性(30)は1月、第1子を出産した。「一日中、誰とも話さず育児をしていると孤独を感じ、虐待に追い込まれる人の気持ちが分かるようになっていた。久々にリラックスできた」と話した。
事業は、県が自治体と新興企業をマッチングするプログラムの一環。25年度の費用は国と県、町で負担し、町民は無償で利用できる。
対象者は、町内で母子手帳を交付された妊娠6~10週から産後半年程度までの女性。手帳交付時に案内しており、月に2回、センターに集まり、6月16日現在で延べ14人が参加した。スマートフォンやパソコンで個別に受講もでき、18人が登録している。ストレッチやマッサージ、呼吸法などを学ぶ約20講座があり、約100人の登録を目指している。
ストレスチェックや公認心理師による面談も受けられる。気分の落ち込みや食欲、睡眠の状況などを把握し、町と連携して対面での支援につなげる狙いだ。
「隙間時間に活用して」
町の出生数は年間約100人。町などの調査では、3~4割の母親に産後うつの傾向がみられた。平日の日中には町の助産師が面談し、家族に協力を求めることや無料通信アプリ「LINE」での相談にも応じているが、休日や夜間は職員が不在となるのが課題だった。
町内には産婦人科や宿泊型の産後ケア施設はないのが現状だ。母親らが「子育てがつらい。涙が止まらない」「自傷の衝動にかられる」と訴えても、対応が数日後の開庁日になる例もあったという。
町とメロンは3月に契約を締結した。サービスを通じて、母親らが自己肯定感の向上や育児ストレスへの対処方法を身につけ、良質な睡眠の確保につないでもらう。効果は今後、アンケートなどで検証する。
町こども未来課の石橋裕美係長は「講座を通じて自身を大切にする意識を持ってもらえれば、産後うつの深刻化を食い止められると期待している。オンライン型もあるので、隙間時間での活用を呼びかけたい」と話した。