【佐賀】ハルウララ超す連敗中 佐賀競馬のパドマーワト

 九州唯一の地方競馬「佐賀競馬」(佐賀県鳥栖市)で、デビューから5年余り一度も勝利をつかめぬまま、懸命に走り続ける競走馬がいる。7歳の牝馬(ひんば)パドマーワトで、これまでの戦績は0勝123敗。「負け組の星」として一大ブームとなったハルウララ(高知競馬、0勝113敗)を上回る連敗記録で注目が高まっており、競馬場では、初勝利を願うファンらが声援を送っている。


連敗記録を更新し続ける「パドマーワト」(10月13日、佐賀競馬場で)

デビュー5年、0勝123敗

 11頭で競った10月13日の最終レース(ダート1300メートル)。ナイターの照明で照らされる中、パドマーワトはスタートから出遅れると、そのままズルズルと引き離され、10位でフィニッシュ。連敗記録は123に更新された。

 現在、主に出走しているレースは、獲得賞金を基に分けられている5段階のクラスで一番下の「C2」。とはいえ、馬の入れ替わりが激しい佐賀競馬では、中央競馬で勝利経験もある馬が再起をかけて一緒に走る場合も多いといい、勝つことは容易ではないという。

 パドマーワトは、2018年に北海道新冠町の牧場で生まれた。頭にあるハート形の白斑がトレードマークで、名前はインドの叙事詩に登場する美しい王妃に由来する。20年6月に門別競馬場(北海道)でデビューし、同年11月に佐賀競馬の柳井厩舎(きゅうしゃ)に移籍。脚の腱(けん)を切る大けがをしたこともあったが、無事に回復し、最近は安定して2週間に1度のペースで走り続けている。

 調教師の柳井宏之さんは、集団の真ん中あたりで走り、終盤に先行する馬を追い越す「差し馬タイプ」とみている。ただ、成績は22年9月20日に記録した3着が最高で、勝利は遠い。


パドマーワトと調教師の柳井宏之さん


 地方競馬全国協会(東京)によると、パドマーワトの連敗数は佐賀競馬の約100年の歴史で最も多い。地方競馬の歴代最多連敗記録はダンスセイバー(門別競馬場)の229連敗だが、現役に限ると、高知競馬のメイショウサソリザ(24日時点で133連敗)に次ぐ記録という。

初勝利願う温かい声援

 それでも懸命に走る姿に、競馬場では温かい声援が送られている。福岡県筑後市の40歳代男性は「ずっと負けているけれど、一生懸命に走る姿がけなげで、ひかれる。どうにかして勝利をつかみ取ってほしい」とエールを送る。パドマーワトの写真を貼った自作のうちわを手に応援に訪れた60歳代女性は「ハート形の斑点など、とにかくかわいい。『1勝したら引退』とも聞くので、勝ってほしいけれど複雑……」と心境を明かす。

 柳井調教師は「レースでは、周りの馬に離されないように必死に食らいついて走っている。そんな姿勢が、皆さんに応援されているのではないか」と話す。

 愛知県でサービス業を営む馬主の男性は「当初は早く勝てと思っていたが、今は無事に帰ってきてという思いが強くなった。120戦以上も走り、いつ引退でもいいとは思うが、ここまで応援されているのだから、佐賀競馬全体を盛り上げてほしい」と語る。

 佐賀競馬を運営する県競馬組合は「応援してくださる方が足を運んでいただくことで、佐賀競馬全体を応援してもらえるようになればうれしい」と期待している。


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