2017年の九州北部豪雨で被災したJR日田彦山線の一部など約40キロ(福岡県添田町―大分県日田市)でバス高速輸送システム「BRTひこぼしライン」の運行がスタートして、2月28日で半年となった。乗客数は豪雨災害後に走っていた代行バスを上回っており、順調な状況が続く。一方で、三つの停留所(駅)がある福岡県東峰村では、観光客の交通手段の確保などが課題となっており、対応を本格化させている。
「観光客戻る」
「駅で降りた観光客が立ち寄ってくれるようになった」。東峰村の大行司駅近くで酒造場を営む男性はBRTの効果について語る。
JR九州によると、昨年8月の開業から今年1月末までで約5万人が乗車し、1日当たりでは約320人。代行バスの1日平均乗客数約60人に比べ、大幅な増加となった。古宮洋二社長は2月22日の記者会見で「多くの方に利用いただき、成功したと思っている」と語った。
村内の移動に課題
ただ、同村では課題も見えてきた。
「大行司駅を乗り合いタクシーの拠点として整備し、村内への回遊を促します」。2月27日夜、村が開いた同駅周辺の整備基本計画の説明会で、担当者が説明した。駐車場の整備により、乗り合いタクシーの乗降位置をわかりやすくし、利用を促進するという。
BRTへの転換に当たり村は定時制とスピードを重視。駅は増やさず、村内のほとんどの区間は専用道を走っている。焼き物の里として有名な小石原までは、最も近い同駅からでも車で約20分かかるため、観光面からも交通手段の確保は不可欠となっている。
駅への交通手段については、村が開業に合わせ、乗り合いタクシーの運行を開始。村外の人を含めて無料だが、これまで電話での受け付けが平日の昼のみで、観光客にとって使い勝手は良くなかった。
このため、村は2月からAI(人工知能)を活用し、LINEや専用アプリから24時間受け付けができるようにした。駅の整備とともに、今後、観光客が周遊できる環境を整えていく方針だ。
宿泊施設の再整備も急務だ。今月、宿泊もできる複合施設「アクアクレタ小石原」が運営会社の資金繰り悪化で閉鎖された。土地、建物を所有する村は「再開したい」としているが、運営会社は破産手続きを申請中で、現時点で次の業者選定は見通せていない。村内の宿泊施設は元々少なく、村は滞在型観光の推進のため、早期の営業再開を模索している。
駅の個性生かす
村は3月上旬まで、残り2駅の整備についても説明会を実施することにしている。真田秀樹村長は読売新聞の取材に「BRTを村内の交通に連結させる仕組みがようやくできあがった。今後は三つの駅の個性を伸ばし、多くの人を呼び込みたい」と述べた。