キノコが特産の大木町、廃菌床を使ってカブトムシを育成

 福岡県大木町は、有機廃棄物を使って環境保全や農業振興に取り組む秋田県大館市の新興企業「TOMUSHI(トムシ)」などと連携協定を結んだ。町特産のキノコ栽培で出る廃棄物の菌床を活用し、カブトムシを育てて販売するほか、幼虫を粉末にして魚の養殖で使う餌を作るなどの取り組みを始める。

秋田の企業などと連携協定


協定締結式で握手を交わす広松町長(中央)と、石田代表(右)、阿部代表


 同社は2019年に設立され、廃棄野菜や廃菌床を加工してカブトムシの餌を作る特殊技術を開発。カブトムシの育成・販売や、カブトムシを使った飼料や肥料の研究開発などに取り組んでいる。

 大木町は、西日本有数のシメジなどのキノコ産地として知られる。毎年1万トン以上の廃菌床が発生し、一部はアスパラガスやイチゴ栽培の肥料として使われてきたが、大半は廃棄処分されてきた。

 キノコの生産や販売を手がける同町の農事組合法人「ドリームマッシュ」が、昨年から同社と協力して廃菌床でカブトムシを育て、成果を上げていたことから、取り組みを広げようと連携協定を結ぶことにした。


ヘラクレスオオカブトの成虫(提供:トムシ)


 協定は、町と同社、同社の子会社で町内に設立された「大木バイオクリエーションズ」の3者で締結。▽廃菌床を使ったカブトムシの育成・研究▽昆虫を活用した環境負荷の低減▽新産業・新品種の育成・研究――などで連携する。

 具体的には、廃菌床から作った餌でカブトムシを育て、今後3年間で1万~2万匹の成虫の出荷を目指す。また、数か月で成長するヘラクレスオオカブトなどの幼虫を粉末に加工して、魚粉に代わる飼料を作る。廃菌床は幼虫のふんが混じって発酵することで、野菜の肥料や土壌改良用の素材としても再利用できるという。

 町は4月から地域おこし協力隊員6人を採用し、同社の業務を支援する。

「食と農の循環」可能性広がる

 3月1日に町役場で行われた締結式には、トムシの石田陽佑代表と大木バイオクリエーションズの阿部咲輝代表が出席。石田代表は「(魚粉に代わる飼料の)原料作りには大量の廃菌床が必要になる。大木町に協力してもらい、ありがたい」と話した。広松栄治町長は「町は未来につなぐ環境先進のまちづくり、食と農の循環に取り組んでいる。今回の協定は町の可能性を大きくする」と期待を込めた。

 トムシは、久留米市に研究所を設けることを計画しており、50種類を超える国内外のカブトムシを調査し、短期間で幼虫を育てるシステムなども検討していくという。


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