立命館大学発ベンチャー(新興企業)の「オーシャンリペア」(福岡市)は8月27日、独特の臭みなどから食用にしづらい「未利用魚」の一種イスズミを主原料とした高級ドッグフードを開発したと発表した。9月1日に発売する。海藻類を食べ尽くして海洋環境を悪化させる魚種として知られ、環境の回復や漁業の振興につながる新ビジネスとして収益化を目指す。
藻場の回復 漁業の振興も
九州では海藻や海草が生い茂る藻場が消失する「磯焼け」が多くみられるようになっており、原因の一つとしてイスズミなどによる食害が指摘されている。同社は資源の循環を研究する立命館大の光斎(こうさい)翔貴准教授が、こうした課題を解決しようと今年2月、福岡市で創業した。まずは長崎県五島市沖で漁獲された未利用魚を主原料とする。
キャットフードも計画
イスズミは食用として一般的でないものの、ドッグフードの原料として使用した場合、鶏肉や牛肉を原料とする一般的な商品より低脂質で胃腸への負担が少ないという。従来、漁師の網にかかっても廃棄されたり放流されたりしていたが、1キロ・グラムあたり100円で買い取って駆除につなげるほか、漁師の新たな収益源にしてもらう。キャットフードの開発も計画している。
藻場は魚介類が身を隠す場所となり、豊かな海洋環境の維持に欠かせない。また、光合成で二酸化炭素(CO2)を吸収するため、温室効果ガスの削減にもつながる。削減効果は「カーボンクレジット」として売ることができる仕組みがあるため、同社は藻場の回復による効果を検証して収益化することも視野に入れている。
「持続可能な仕組みを」
ドッグフードは1袋500グラム入りで税込み3500円。インターネット通販や量販店で取り扱い、5年目に1億円の販売を目指す。社長を務める光斎准教授は27日、福岡市で記者会見し、「九州の多くの海で藻場が消失している。(その原因となる)未利用の魚を有効活用する、持続可能な仕組みをつくりたい」と意気込みを語った。