【宮崎】地域商社が高原町の浮揚に奮闘 マッチョも一肌

 地方の人口減や商店街の疲弊などが続く中、宮崎県高原町で地域商社が中心となり、にぎわい創出への取り組みが活発に行われている。「奥霧島地域商社ツナガルたかはる」の社名通り、後継者を探す事業者と若手を結ぶ事業承継や、地方に関心のある人を呼び込む関係人口拡大など、人と人や人と地域をつなげる事業を展開。町が目指す「若い世代が根付くまちづくり」が広がりつつある。

高原ファンを


皇子原温泉健康村で行われた「マッチョ」な撮影の様子

 霧島山の麓に位置する高原町は、湧水に恵まれた自然豊かな町で、基幹産業の農畜産業では質の高い農畜産品が生産されている。宮崎自動車道のインターチェンジがあり、観光地として知られる御池もある。しかし、町によると、産業振興が課題で、ピークの1955年に約1万6500人を数えた人口は約8300人(昨年11月現在)に減少。若い人の流出が止まらず、商店など地元商工会の加盟事業者は2000年の311から249に減った。

 「若者のニーズを反映させた施策で『高原ファン』を増やす」。そう考えた町が昨年3月に設立したのが地域商社だ。

 ヒトやコト、モノをつなぐことで町の新しい価値を生み出していくとの思いから、社名には「ツナガルたかはる」を入れた。事業の一つの事業承継では、後継者不足に悩む商店などの情報をサイトで紹介して起業に関心のある若い人らとマッチング。1年足らずで3件の事業承継が実現した。

SNSで発信

 町の魅力発信も力を入れる。2月中旬、同町の皇子原温泉健康村で、少し変わった写真撮影が行われた。体を鍛え上げた「マッチョ」な男性2人が上半身裸になり、温泉や客室などでカメラに向かって真剣かつユーモラスにポーズを決める。


真剣かつユーモラスにポーズを決める

 2人は全国各地の魅力のある場所でポーズを決める画像を撮影、提供する「スマイルアカデミー」(福岡市)のAKIHITOさん(37)とTOSHIさん(32)。今回の撮影は地域商社ツナガルたかはるが、2人の写真を通じて町への関心を呼び込もうと企画した。

 撮影した写真はフリー素材サイト「マッスルプラス」で公開。近年はSNSに投稿された写真や動画が話題となり、スマートフォンなどで多くの人に視聴される「バズる」現象が注目されており、皇子原温泉健康村副支配人の山下友希斗さん(26)は「何をきっかけにバズるかわからない。興味を持った人が高原を訪れてくれれば」と期待する。

町や企業をつなぐ

 ツナガルたかはるは昨年12月、町などと「企業版関係人口づくり推進協議会」も設立した。町外の企業に呼びかけ、自然豊かな町内に社員研修やワーケーションなどの需要を呼び込むのが狙いで、東京のIT企業が社員研修の場所を町に移す動きも出ているという。

 ツナガルたかはるの社員は14人。まちづくりに関心がある町内外出身者が集まる。事業開発ディレクターの石川裕士さん(30)も愛媛県出身で、宮崎大在学時の知人に誘われ昨年5月から勤務。「町や企業などのニーズを把握し、結びつける役割を担いたい」と話す。


「みんなが楽しいと感じられる町にしたい」と意気込む石川さん

 町も30~40歳代の職員2人を出向させている。町幹部は「従来の町政では若手企業人らの考えに触れる機会も発想もなかった。(出向)職員を定期的に入れ替えることで、現代のニーズを取り込むという意識改革につながる」と期待する。

 内閣府によると、地域商社は全国各地で誕生し、各地の課題に応じた取り組みが行われている。同府の担当者は「地域商社は官や住民との連携を深め、自治体の自立自走につなげることが求められる」とする。

 「みんなが楽しいと感じられる町になるよう、様々な選択肢をスピード感を持って提供したい」とツナガルたかはるの石川さん。同社は今後も、町のPRや雇用増などにつながるプロジェクトを計画している。


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