【大分】青春の味「フレンド」復活へ! 大分舞鶴高近く

 でかい、安い、うまいの三拍子そろったチキンカツなどで、約20年間にわたって大分の高校生たちの胃袋を満たし、2022年10月に惜しまれつつ閉店した軽食店が2月22日に復活する。店のファンだったという高校野球部のマネジャーから話を聞いた両親が受け継ぐ。「高校生たちの青春の一ページを残したい」。家族の思いが一風変わった「事業承継」につながった。

高校野球部マネジャー両親が店を継承


新たな店舗で、前店を切り盛りしていた三浦優里さん(手前左)、弘志さん(同右)夫婦と会話を交わす、店主の小坂哲也さん(右)と真由美さん夫婦

 ラグビーや野球の強豪として知られる大分市の大分舞鶴高。その校舎から直線距離で約400メートルの住宅地の一角で、軽食店の開店に向けた準備が進んでいた。

 「お店が復活するなんて想像もしてなかった。店内のにぎやかさが受け継がれたらうれしい」。かつての店主、三浦優里さん(79)は笑顔で語った。

 軽食店「フレンド」は02年10月に三浦さんが開業した。一人で切り盛りしていたが、夫の弘志さん(80)の退職後は2人で店に立った。


2月22日にオープンする軽食店「NEWフレンド」

 「子どもたちが集まり、みんなが友達になる場所となってほしい」との願いを込め、「フレンド」と名付けた。唐揚げをおにぎりの中に二つも入れた名物「からむす」や、チキンカツなどを100円台で提供した。部活動が終わる頃には大分舞鶴高や大分商高の生徒らでにぎわい、店外にも生徒があふれていた。

 大分舞鶴高の野球部員たちも練習後、毎日のように通っていた。部員たちは、22年の選抜高校野球大会に21世紀枠で初出場を決めた。出場が決まった日にも部員たちは店を訪れ、喜びを分かち合った。三浦さんは「自分のことのようにうれしかった」と振り返る。

 しかし、夫婦も高齢になり、新型コロナウイルス禍にも見舞われた。次第に「店を閉めよう」と考えるようになり、22年10月に閉店した。

「居心地良い場所に」

 多くの人が残念がり、野球部マネジャーだった同校3年の小坂寧々(ねね)さんもその一人だった。「フレンドで、誰かが買ってきた物をみんながつまみ食いするようなことが楽しかった」。閉店の際には、部員らと一緒に寄せ書きを贈った。

 転機は昨年5月。寧々さんの父親で、住宅メーカーを経営する哲也さん(47)がフレンドのあった土地が売りに出ていることに気づいた。「部活が終わった後に行くところがなくてさみしい」。寧々さんからの話で、閉店を残念に思っていた哲也さんは「本当になくなってしまう」と決断。個人として土地を購入した。その後、三浦さんに復活を申し出て、人気だったメニューや店での思い出を丁寧に聞いた。

 更地で土地を受け取った後、哲也さんが設計や現場監督を務め、新たな店舗を新設。店名は「地域の新しい友だち」との意味を込め、「NEWフレンド」とした。木造平屋で約20平方メートルの店内には、カウンター席が四つと、4人が座れるテーブル席を一つ設ける。店を切り盛りするのは、寧々さんの母親の真由美さん(45)だ。真由美さんは「高校生たちにとって居心地が良く、温かな場所にしたい」と話す。


「NEWフレンド」の前で

 大分舞鶴高野球部のOBで、かつてフレンドに通っていた同部部長の河野友彦教諭(29)は「開店したら、ほかの野球部OBと一緒に行って、思い出を語り合いたい」と喜んだ。

 哲也さんは「大分舞鶴高の野球部員や地域の高校生たちに長く愛される店にしたい」と意気込んだ。


advertisement