【山口】みすゞの詩を歌に ちひろさんメジャーデビュー

 山口県長門市出身の童謡詩人・金子みすゞ(1903~30年)の詩に曲をつけて歌うシンガー・ソングライター、ちひろさんが9月24日、念願のメジャーデビューを果たした。ちひろさんはデビューを前に山口市役所を訪れ、全15曲を収録したデビューアルバム「Misuzu Songs」と新曲「帆」を伊藤和貴市長に披露。歌手活動22年目で迎えた「船出」を報告した。


新曲を披露するちひろさん

22年目の「船出」 山口市長に報告

 ちひろさんは山口市出身。以前は東京で作曲家として活動しており、多くの楽曲を提供してきた。しかし、自身の音楽性に迷いが生じ、2003年に帰郷。傷心の中で出会ったのが、みすゞの代表作「私と小鳥と鈴と」だった。

 空を飛べる鳥やきれいな音の鳴る鈴を人間と比較し、最後は「みんなちがって、みんないい」と、それぞれの良さを認める――。詩を読んだ後、「自分らしさを大事にして作曲していいんだ」と、気持ちが軽くなったことを今でも覚えているという。

 すぐに曲が頭に浮かび、同年12月から歌手活動をスタート。これまでに48曲を作りあげ、長門市公認の「金子みすゞアンバサダー」や山口七夕ふるさと大使として全国各地で歌ってきた。

 メジャーデビューのきっかけは、昨年1月、東京で開かれたコンサートだった。日本レコード協会に加盟するレコード会社の関係者が、ちひろさんの歌声に惹(ひ)かれた。今年1月に長門市で行われた公開収録にも関係者が訪れ、実力を買われた。

「金子さんの光 伝える」

 新曲「帆」はデビューに合わせて今年7月頃に作曲。新たなステージに挑戦する自身の門出と、みすゞの詩に登場する舟を重ねた。

 また、曲中の「かがやきながら」というフレーズは、昭和歌謡のヒット作を次々と世に送り出した長門市仙崎出身の作詞家・大津あきら(1950~97年)が作った徳永英明さんの「輝きながら…」とも重なり、「金子さんと大津さんのふるさとへの思いも込めて歌っていきたい」と語る。

 19日の山口市役所での訪問で、新曲を聴いた伊藤市長は「故郷への思いを題材に歌い続けてきた結果。本当におめでとう」などと祝福した。

 デビューアルバムには他に、「私と小鳥と鈴と」や「大漁」「星とたんぽぽ」などが収録されており、3300円(税込み)。ちひろさんは「金子さんが照らしてくれる光を、歌を通して全国や世界の人に伝えるために歌っていく」と力を込めた。


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