ものづくりに障がい者の力 桐箱店3代目がつくった「ハコタス」

日本酒を入れる桐箱の組み立て作業を行うハコタスの利用者たち

記事 INDEX

  • 集中できる環境で自信に!
  • 外注を契機に「職人率」向上
  • 「仕事がある」という安心感
  • もう一歩先のサービスまで

 福岡県古賀市で就労継続支援事業所を運営する一般社団法人「ハコタス」が、4月に事業を開始しました。同市で1929年に創業した増田桐箱店の3代目社長・藤井博文さんが代表理事を務め、同社の業務を通じ、ハコタスの利用者に働く場を提供。これまでに6人が働き始め、見学や体験を希望する人も相次いでいるそうです。藤井さんは「福祉とものづくりを掛け合わせた取り組みの可能性が広がれば」と期待しています。

《就労継続支援事業所》障がいや病気のため、一般企業への就職が難しい人らに就労機会を提供する施設。雇用契約を結んで最低賃金での工賃支給を保証するA型と、雇用契約を結ばず各施設の裁量で工賃を支給するB型がある。

集中できる環境で自信に!

 7月下旬、木材を加工する機械音が響く同社の工場で、ハコタスの利用者2人が、日本酒を入れる桐箱の組み立て作業を行っていました。2人は慣れた手つきで黙々と板材を組み合わせ、出来上がった箱があっという間に積み上がっていきます。


手際良く桐箱を組み立てるハコタスの利用者

 6月から工場で働く女性は「以前の職場では、人とのコミュニケーションが苦手でしたが、ここでは一人で集中できる作業を任せてもらえ、働きやすいです」と話してくれました。組み立てのほか、レーザーで木材に模様を彫る作業も担当しています。「不器用だと思っていたけど、やってみると自信が持てました。将来は職人を目指したい」

外注を契機に「職人率」向上

 藤井さんが工程の一部を外注するようになったのは10年ほど前。刑務所にある刑務作業用の木工機械がほとんど使われていないと知り、桐箱の組み立てなどを依頼したのが始まりです。職人でなくてもできる作業があることに気づき、5年前からは福祉事業所にも外注するように。自社の職人が高度な技術を要する作業に専念できる「職人率」を高めるため、今では刑務所10施設、福祉事業所4施設に作業を委託しています。

 こうした経験から、藤井さんは福祉事業所を自ら運営したいと考えるようになりました。就労継続支援事業所で施設長を務めるなど、20年以上にわたって障がい者福祉サービスに携わってきた上田浩司さんに相談し、ハコタスの設立にこぎ着けました。


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「仕事がある」という安心感

 設立に合わせ、障害者就業・生活支援センターや特定相談支援事業所などに声をかけて利用者を募集したところ、見学や体験の申し込みが最初の3か月間で30件を超えました。8月7日現在、A型で2人、B型で4人の利用者がおり、増田桐箱店の工場などで働いています。

 順調な滑り出しに、ハコタスの常務理事を務める上田さんは「就労継続支援事業所の多くは障がいのある人を集めて開所し、そこから仕事を探しに行きますが、ここでは最初から仕事がある。体験や見学ができ、利用者自身が働くイメージを持ちやすいことが雇用につながっています」と話します。


作業用のピクトグラムを紹介する藤井さん

 同社の工場では多くの従業員が働いていますが、それぞれの作業が個人で完結し、担当する工程を絵と色で示すピクトグラムが用意されています。障がいのある人が作業に取り組みやすい環境が整えられていることも、利用者の「働きたい」という意欲の後押しとなっているそうです。

もう一歩先のサービスまで

 「障がい者に働く場を提供する」という考えで始まった取り組みですが、利用者を受け入れる増田桐箱店にも変化があったといいます。

 その一つが、桐箱作りに新たな価値を加えられるようになったことです。同社では大手線香メーカーから桐箱を受注していますが、ハコタスの利用者がいることで、線香の台紙を折って入れる作業なども受注できるようになりました。


線香の台紙を折るハコタスの利用者

 「これまでは箱を作って納めるだけでしたが、『もう一歩先のサービスまで頼めるなら』と顧客からの評判も良くなりました」と藤井さんは手応えを語ります。

 ハコタスを通じて働く人は今後も増える見通しで、JR古賀駅の近くに設けた作業所「ハコタス古賀」も2026年度中に本格的に活用を開始する予定です。加えて、すでに働き始めた人も徐々に力を付けているため、短時間や単発で働く「スキマバイト」の人材にも頼らないことにしました。


JR古賀駅近くに設けた作業所「ハコタス古賀」を紹介する上田さん

 藤井さんは「マルチプレーヤーでなくても、何かに特化した力があればいいという考えで利用者にきてもらっています。実際、障がいのある人が仕事を勝ち取ることで、『自分もうかうかしていられない』という雰囲気が職場全体に出てきました。利用者の中から職人が誕生してくれないかと今からワクワクしています」と笑顔を見せます。

 利用や見学に関する問い合わせは一般社団法人ハコタス(092-942-3061)へ。


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