楽して持続!先端技術でスマート農業 古賀市で実証実験進む

草刈り機を操作する村山さん

 農作業に先端技術を取り入れることで負担軽減を図るスマート農業の実証実験が、福岡県古賀市小野地区で行われている。深刻な暑さが続く中、隣接する地区では8月、高齢男性が田んぼで倒れて死亡しているのが見つかったばかり。過酷な作業を省力化、効率化して農業者を守りながら、高齢になっても農業を続けられる環境づくりや新規参入を促す狙いがある。

指先で遠隔から操作

 「指先だけで草刈りができる。子どもでも扱えるほど簡単」。同市米多比(ねたび)の山林で、無線操縦の送信機を手にした村山行秀さん(68)が笑顔を見せた。

 村山さんが実証の一環で無償でレンタルしているのは、遠隔で操作できる草刈り機。元は農地だったでこぼこの荒れ地を自在に走行し、高く茂ったシダを刈り取る。無限軌道で傾斜もお手の物だ。

 東京から古里にUターンし、先祖代々の約1万平方メートルの土地を守る村山さんは「これだけの広さを、この暑さの中で草刈りをするのは無理。死んでしまう」と話す。ヤブにはハチの巣が隠れている恐れもあり、「電波と目さえ届けば、日陰やエアコンが利いた車内にいても作業ができる」と喜ぶ。

畑の様子もスマホで

 山あいに広がり、約250世帯が農業に携わる小野地区。高齢化が進む中、持続可能な農業を目指し、地元農家や九州産業大の研究者などで任意団体「スマートアグリビレッジおの推進協議会」を2023年3月に設立した。農林水産省の事業を活用し、NTTコミュニケーションズの協力を得てスマート農業技術の普及や買い物支援などの実証に3年計画で取り組む。


畑に設置された気象用センサー


 同市薬王寺の農地に立つのは、気温や湿度、照度、降雨量、風向きなどを測定するセンサー。15分に1度、データが更新され、農業者は猛暑や豪雨の中を農地まで足を運ばなくても、手元のスマートフォンやタブレットで最新の状況を把握できる。積算温度のデータから、最適な収穫のタイミングも判断できるという。


タブレットに表示された、温度や湿度、照度などの最新データ


 このほか、営農支援アプリで作業を記録し、情報を共有。9月にはドローンによる農薬の空中散布も予定する。

 農業に携わって半世紀ほどの力丸廣己さん(75)は「朝から草刈りを始めても、10時頃には続けられないほどの暑さになる。農家も年を取っているので、少しでも楽できればありがたい」と話し、村山さんも「次世代の農家を助けることにつながる」と期待する。


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