古い着物を思い出とともに再生 伝統美が今によみがえる「アップサイクル」

キモノヤーンを手にする藤枝さん

記事 INDEX

  • 細く切って手芸用「糸」に
  • 上質なシャツにリメイク
  • 下準備のコツを教わった

 古いものや捨てられるものを、工夫して魅力的な別のものに作り替える「アップサイクル」が注目されています。祖母や母が残した着物や、着る機会がない思い出の着物も、美しい色や柄を生かして生まれ変わらせることができます。

細く切って手芸用「糸」に

 着物アップサイクルのユニークな例が「キモノヤーン」。着物を幅2センチほどに細く切ってひも状につなげた手芸用素材で、毛糸のように編んだり、リボンやフリンジにしたりと幅広く使えます。ヤーンは「糸」を意味する英語で、福岡市のプランナー藤枝瀬里子さんが、実家にしまってあった亡き祖母の着物と、趣味の編み物を結びつけて発案し、2018年に商品化しました。

 材料となる着物は、「母が大事にしていたので捨てられない」などと全国から寄付されたものを活用。1枚でヤーンが80~150メートル分できます。着物をほどき、細く裁断してミシンで縫い合わせるのは手作業で、「『面白そう』と引き受けてくれた縫製会社に出会えるまで、数十社に断られました」と藤枝さんは笑います。


キモノヤーンで作られたバッグやアクセサリー

 主にネットショップで販売しており、1玉(30メートル)3300~4500円。当初はまるで売れませんでしたが、購入したハンドメイド作家がキモノヤーンを使ったバッグやアクセサリーなどをSNSに投稿してくれるようになると、売り上げが徐々に伸びました。福岡県筑紫野市の作家の女性も愛用者で、「同じ形の作品でも、キモノヤーンを使うと1点ごとに全く雰囲気が変わる」と魅力を語ります。(作品例は→こちら

 現在は、アップサイクル商品の企画開発会社「リクラ」(本社・石川県)の福岡オフィスで働く藤枝さん。「着物には現代にない色や柄があり、捨てるのはもったいない。新たな可能性を広げていきたい」と力を込めます。


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上質なシャツにリメイク

 経済産業省の2015年の調査では、50歳代以上の女性の86%が着物を所有している一方、半数以上が「今後は着るつもりがない」と回答しました。思い入れのある着物は捨てにくく、洋服やバッグなどへのリメイクを考える人は少なくありません。

 北九州市八幡西区の「FAR EAST FABRIC(ファー・イースト・ファブリック)」は、鹿児島県特産の大島紬(つむぎ)などをボタンダウンなどのシャツに仕立てています。社長の川俣大輔さんは「大島紬ならではの上質感や独特の色柄が、特に年配の男性によく似合います」とアピールします。


着物から仕立てたボタンダウンシャツを手にする川俣さん

 1枚3万円前後で、仕立て上がりのシャツ販売のほか、持ち込みの着物のリメイクも引き受けています。祖母が残した大島紬をシャツに仕立てた福岡市の女性は「父への誕生日プレゼント。祖母の形見で作ったと知ったら、父も大事に着てくれるはず」。川俣さんは「着物は日本が世界に誇る文化。次世代に残していきたい」と話します。



下準備のコツを教わった


 家にある着物を自分で洋服などに仕立てる場合、洗うなどの下準備が大切です。福岡市や佐賀市などで着物リメイク教室を開く「ブティックARO(アロ)」(福岡市)のオーナー鈴木茂子さんに、手順や注意点を教わりました。


着物をリメイクした服を手にする鈴木さん


 正絹の着物を家庭で洗う場合、ほどいて布に戻してからおしゃれ着用洗剤で洗います。軽く押し洗いしてすすぎ、タオルドライで水分を取ります。しわになるので絞らないで。ハンガーを使ってしわを防ぎながら日陰干ししたら、生乾きのうちにスチームアイロンをかけます。アイロンは押すようにかけて。滑らせると生地が不規則に伸びます。

 絹は水で洗うと、多少の劣化は避けられません。ちりめんなど、かなり縮む素材もあります。一方、ポリエステルや木綿の着物は洋服と同じように洗えます。


着物をリメイクした洋服やバッグ


 着物1枚からワンピースやコートなど色々な作品が作れます。着物だと派手な色や古くさく見える柄も、洋服にするとおしゃれになるから不思議です。


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