「昭和の忘れ物」が語りかけてくること 太刀洗レトロステーションで知る戦後の歩み
記事 INDEX
- 飛行機が目を引く資料館
- 時代を伝える数々の資料
- 戦争、復興、そして平和
駅舎の上に着陸した本物のジェット機? 福岡県筑前町の甘木鉄道・太刀洗駅に隣接する旧国鉄駅舎に自衛隊機が展示され、珍しい光景が訪れる人の目を引いている。
飛行機が目を引く資料館
ここは、渕上宗重さん(90)の私設資料館「太刀洗レトロステーション」。1986年に旧国鉄甘木線を引き継いだ第3セクターから、古くなった駅舎を借り受け、「平和記念館」として運営してきた。記念館としての役割を町立の施設に譲った今は、「昭和の忘れ物」をテーマに時代の"息づかい"が聞こえてきそうな生活用品を並べている。
ジェット機は渕上さんが航空自衛隊築城基地から無償貸与を受けた「T33ジェット練習機」で、今も年に1度点検にやって来るという。当初は地上に設置する予定だったが「車5台分の場所が必要で、通行の妨げになるから」と駅舎の上に置いた。
時代を伝える数々の資料
甘木線開通時の木造平屋駅舎を活用した館内には、筒形のレコードから音を奏でる蓄音機、戦前から使われて今も聞くことができる真空管オーディオ、昭和10年代のカメラ雑誌など、昭和の日常を伝える2000点以上の品々が所狭しと展示されている。
2009年、駅から歩いて数分の場所に、筑前町立大刀洗平和記念館が完成した。博多湾から引き揚げられた戦闘機や特攻隊員の遺書など渕上さんのもとにあった戦時資料約2100点は、新しくできた町立の施設に引き継がれた。
以来、旧駅舎の施設は太刀洗レトロステーションとして、渕上さんが趣味で集めていた昭和の貴重な品々を展示するようになった。
戦争、復興、そして平和
一帯には戦時中、旧日本陸軍の大刀洗飛行場があった。東洋一の規模と言われた飛行場は、中国大陸への中継基地の役目も担う重要拠点だった。
旧太刀洗駅は、戦地に向かう兵士らと面会に訪れた肉親らが別れを惜しんだことから「別離(わかれ)の駅」と呼ばれたという。その舞台ともなった線路地下道は当時のまま残り、レトロステーションがある旧駅舎で見学することができる。
町立の記念館で戦争について考え、渕上さんの資料館で復興の足跡を知る。時代を語り継ぐ数々の「モノ」を見つめながら、平和の尊さを改めて思った。