福岡大空襲80年 福岡市博物館で戦時の暮らしを伝える企画展

福岡市博物館で始まった企画展の会場

記事 INDEX

  • 戦後80年 節目に展示拡充
  • 総力戦 巻き込まれる市民
  • 戦争の傷跡と復興への歩み

 約2000人の死傷者が出た福岡大空襲から80年。戦時中の福岡の人々の暮らしを紹介する企画展「戦争とわたしたちのくらし」が、福岡市博物館(早良区)で始まりました。節目の今年、身近な資料に触れ、戦争と平和について改めて考えてみませんか。

戦後80年 節目に展示拡充

 福岡大空襲は、1945年6月19日深夜から20日未明にかけて、米軍の爆撃機「B29」の編隊が福岡市中心部を襲った無差別爆撃です。市史によると、被災面積3.78平方キロ・メートル、被災戸数1万2693戸に上り、死者902人、負傷者1078人、行方不明者244人を出したとされています。


福岡大空襲で焼けた市街地の空撮写真などが並ぶ会場


 企画展は、福岡大空襲があった6月19日に合わせて同館が毎年開催しており、今年で34回目。これまでは「戦時期の子どもの遊びや学校生活」「衣食住」「モノ不足」などのテーマを定め、所蔵資料を紹介してきました。


 今年は戦後80年と昭和100年の節目が重なることもあり、展示スペースを例年の2倍に広げました。昭和改元から戦後までの人々の暮らしに焦点を当て、初公開27点を含む約150点を展示しています。


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総力戦 巻き込まれる市民

 展示は五つのコーナーに分かれ、最初の「新たな時代―昭和改元」では、1926年12月25日の昭和改元の日の市民の日記や、第1次世界大戦後の不景気から脱却するため、福岡市で1927年に開かれた東亜勧業博覧会に関する資料などを通じて、時代の雰囲気を感じることができます。


1927年(昭和2年)に福岡市で開催された「東亜勧業博覧会」の資料


 続く「戦争と国民―『総力戦』」では、日中戦争、太平洋戦争に突入し、福岡市でも人員と物資を確保する総力戦となった様子が伝わる資料を集めました。出征者を見送る写真や、徴兵検査に合格した人に贈られた日の丸旗は初公開となります。


戦争への協力を求める標語などが書かれた駅弁の包み紙


 「戦時のことば―戦争継続のために」では、戦地に行かない、いわゆる銃後の国民にも、戦争への様々な協力の呼びかけがあったことが伝わります。国債の購入や資源の供出を呼びかけるポスターのほか、有名な「欲しがりません勝つまでは」の標語、鉄道利用の自粛やコメの節約を求める文章が書かれた駅弁の包み紙なども紹介しています。


戦争の傷跡と復興への歩み


空襲による火災の熱で溶けた古銭の束(左)や米軍機が落とした焼夷弾の部品


 「福岡大空襲と戦争の終わり」では、空襲で被災した市街地の様子を写した写真や被災者の日記、焼夷(しょうい)弾による火災の熱で溶けた古銭の束などが並び、被害の大きさを知ることができます。「戦後を生きる」では、終戦直後の市内の写真や、職場の復旧を急いでいることを知人に知らせる書簡(初公開)などを通じ、市街地の復興が遅れ、長期化するモノ不足に苦悩した様子が伝わります。


「当時の人の顔や景色を通じて福岡の歴史を身近に感じてほしい」と語る野島さん


 企画展は9月15日まで。同館の学芸員・野島義敬さんは「昭和の始まりから戦中・戦後までの時期に、地域の人が使ったもの、見たものに触れ、改めて戦争と平和について考えるきっかけにしてもらいたい」と話しています。


「戦争とわたしたちのくらし」
会期/2025年6月17日~9月15日
場所/福岡市博物館2階 企画展示室1・2 (福岡市早良区百道浜3-1-1)
料金/一般200円、高校生以上150円、中学生以下無料
開館時間/9:30~17:30 ※月曜休館(月曜が祝日や休日の場合は翌平日)
問い合わせ/092-845-5011


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