米同時テロから20年 現場で見つかった小さなレジが問いかけ続ける「平和」

 約3000人が犠牲になった米同時テロから9月11日で20年――。飲食店「博多めんちゃんこ亭」の福岡市内の店には、崩壊した世界貿易センタービル(WTC)にあった店舗のレジを今も置いています。アフガニスタン情勢が不安定になる中、運営会社の米浜裕次郎社長は「平和とは何かを考えるきっかけにしてほしい」と願っています。

NYの支店がテロの被害に

 博多めんちゃんこ亭は、1978年に福岡市早良区で誕生しました。89年にニューヨークに進出し、95年にはWTCにも出店しました。現在は福岡市や長崎県佐世保市、ハワイなどで8店舗を展開しています。

 WTCの支店では2001年当時、23人の従業員が働いていました。テロが起きた9月11日朝は仕込みのため6人が店内にいましたが、避難して全員無事でした。


20年前の状況を振り返る米浜さん

 副社長だった米浜さんは、アメリカの拠点と日本を行き来する生活を送っていました。テロの一報は、大濠公園を散歩中、従業員からの電話で知らされました。「とにかくテレビを見て!」と言われて急ぎ帰宅すると、画面には、飛行機が突入して黒煙を上げる超高層ビル。「何が起きているのか分かりませんでした」と振り返ります。

 「被害を受けたのは上層階のようで、下層にある支店の営業はどうなるのか気にかけていました。でもビルが突然崩れ落ちて、そんな考えも吹っ飛びました」

 従業員の無事はすぐに確認できました。米浜さんが現地に入れたのは、それから数週間たってからでした。


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目の前は「灰色の世界」

 米浜さんがそこで目にしたのは「灰色の世界」でした。ビル崩壊が巻き起こした埃(ほこり)が広範囲にわたって街の色彩を消し、駅や教会など至る所に家族・知人の安否情報を求めるビラが貼られていました。

 もう一つ直面したのは、戦争へと突き進むアメリカの世論のうねりでした。「戦争はいけないという価値観は、日本もアメリカも変わらないはず。それでも『身を守るために』と戦争ムードが広がっていきました」と話します。街では新たなテロのうわさが次から次に流れ、拡大する恐怖や不安がその流れを助長しました。

 「もし福岡で同じような惨事が起きたら・・・」。街の景色だけでなく、平和への価値観も揺らぐアメリカの姿を目の当たりにし、心配せずにはいられなかったそうです。


テロ現場から見つかり、今は天神店に展示しているレジ

 WTCの現場でレジ3台が見つかったと警察から連絡を受けたのは、テロから約1か月後のことでした。「この出来事を、自分たちのこととして考えなければ」と、レジを日本に持ち帰って福岡市内の店舗に置くことを決めました。

平和とは何か考え続けて

 現在、3台のレジのうち2台は天神店(中央区)に、1台を箱崎店(東区)の入り口そばに展示。レジに残るレシートの日付は、客を最後に送り出した「2001年 9月10日」を刻んでいます。


レジに残るレシートには「2001年9月10日」の日付

 あの日から20年。「最近の出来事だったような感覚で、あのときのアメリカの空気感は今でも鮮明です」と米浜さん。「日本人にも、平和とは何かを考え続けてほしい。レジは、その問いかけのために置いています」

 「対テロ戦争」が繰り広げられたアフガニスタンでは今年8月、アメリカ軍撤退のタイミングでイスラム主義勢力・タリバンが実権を掌握し、情勢はまた不透明になりました。


「戦争が起きない世の中に」と願う米浜さん

 「これまでの戦争は何だったのか」「世界は何も変わっていなかった」と落胆する米浜さんですが、「二度と戦争が起こらない世の中に」という願いが消えることはありません。店の片隅に置いた小さなレジから、平和の尊さを発信し続けます。


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