「屋台、してみらんね」 街のにぎわい持続へ福岡市が4回目の公募を開始
記事 INDEX
- 成功事例を肉声で発信
- スタートアップも歓迎
- 担当係長が体を張って
福岡市は、市の名物にもなっている「屋台」について、新たな営業者の公募を8月から始めました。独自性あるメニューで成功している新規参入者もいることから、「食のスタートアップ」とアピールして、若者らの斬新な挑戦も呼びかけています。募集期間は10月11日までです。
成功事例を肉声で発信
「夏は暑く、冬は寒い。店舗とはまったく違う過酷な環境。でも、それを上回る魅力があります」
8月28日、福岡市の創業支援拠点「スタートアップカフェ」(福岡市中央区)で開かれた「屋台営業者トークセッション」。市内で特ににぎわう天神地区で、5年前から「Telas & mico(テラスとミコー)」を運営している久保田鎌介さん(43)は、約20人の参加者を前に、屋台営業の苦労を率直に話しつつ、魅力も熱く語りました。
「お客さんとの出会いはもちろん、屋台は観光資源として注目してもらえる。新メニューなどもいろいろチャレンジできます」
トークセッションは、市が公募に合わせて企画した情報発信の一環。久保田さんと共に「屋台営業の先輩」としてマイクを握った「HEROs屋台 蒸上(じょうじょう)」の是久晃弘さん(29)も、やりがいを笑顔で語りました。
「メニューも屋台も自分で(自由に)いろいろできる。お客さんの『おいしい』『雰囲気がいい』という声は、すべて自分への褒め言葉」
公募への参加を考えて、来場した会社員男性(24)は「2人とも全然違うタイプで、攻めた店づくりをしている。『自分が考え抜いてやれば、それがオリジナル』と思えた。背中を押してもらった気がする」と、応募への思いを強くしたようでした。
スタートアップも歓迎
福岡市の屋台は戦後の混乱期に増え、1960年代には400軒を超えたといいます。ただ、一部の営業マナーの悪さが問題視されたことなどから規制が進み、新規参入が制限されるように。経営者の高齢化による廃業なども続き、2013年度には143軒にまで減っていました。
市は観光資源として生かそうと、13年に屋台基本条例を施行。水道など衛生面の環境を整える一方、新規営業を可能にする公募制を導入しました。初回の16年度は、108人の応募者から28人を選び、うち23人が営業を始めました。
ただ、そのうち5人が体力面の厳しさなどから営業をやめ、既存屋台も高齢化を理由に廃業するなどしています。市は100~110軒の水準を維持していきたい考えで、4回目となる今回の公募では13区画の営業者を募っています。
天神、中洲地区に比べて空き区画が多い長浜地区では、第2回の公募から「グループ応募」を実施。知人らと協力でき、より参入しやすい仕組みを導入しています。
また、定番の「ラーメン」や「おでん」にとどまらない多様なメニュー・サービスで成功している新規屋台も少なくなく、「スタートアップ」の挑戦の場としてもPR。店舗を構えるより初期費用やランニングコストが低いことも挙げ、多彩な提案を期待しています。
担当係長が体を張って
市は、応募前に屋台運営のことをよりよく知ってもらう情報発信にも力を入れています。8月には、屋台政策を担当する市まつり振興課の矢口健作係長(43)が、体当たりで屋台の設営を体験したレポートをインターネットで公開しました。
矢口さんは「量れないほど重い屋台を毎日運んで片付ける苦労や、道具などを詰め込める構造の奥深さなどを知りました。応募を検討している方に、より詳しくお話ができるようにもなりました」と話します。
このほか、屋台の製作業者や、屋台の大将への1日密着取材を市公式シティガイド「よかなび」で紹介しています。
今回の公募では、筆記試験、書類・面接審査が行われます。来年2月に営業候補者を決め、6~7月の営業開始を予定しています。同課で屋台の魅力向上を担当する濱田洋輔課長は「公募によるバラエティー豊かな屋台の登場は、街の魅力向上につながっています。屋台で多彩なチャレンジをしていただきたく、たくさんの応募をお待ちしています」と話しています。