【いい夫婦の日】夫婦円満が世界を救う! 全国亭主関白協会が説く「いい夫婦」とは

記事 INDEX

  • 声に出して読みたい「愛の三原則」とは
  • 「トリセツ」は神髄を歌っている
  • 福岡県民は九州男児にあらず?

 11月22日は「いい夫婦の日」。妻から離婚を切り出された経験を持つ「全国亭主関白協会」(事務局:福岡県久留米市)の天野周一会長に、全国の亭主たちへ捧げる金言を聞いてきました。夫婦円満こそ、家庭を明るい「ONE TEAM(ワンチーム)」にする決め手だそうです。


天野周一さん

全国亭主関白協会会長。福岡県久留米市。1952年生。自称、日本で一番妻の尻に敷かれている男。著書に「亭主力」(角川SSC新書)、「妻の顔は通知表」(講談社)など。

きっかけは妻からの「三下り半」

――全国亭主関白協会は今年で20周年を迎えました。設立のきっかけは。

 忘れもしない1999年4月、私は妻から突然、三下り半を突きつけられました。夕飯のときでした。私はポロッと箸を落としましたね。ちゃんと給料も入れていたし、年に1、2度の旅行にも連れて行っていました。私にいたらないところはないと思っていました。

 すると、妻から「理由が分からんことがあなたの致命傷」と言われました。当時、私は仕事がものすごく忙しかった。妻に話しかけられても、「忙しい」のひと言で相手にしなかった。要するに「飯、風呂、寝る」しか言わない、昔ながらの亭主関白だったわけ。妻に一度も「ありがとう」も「ごめんね」も言ったことがありませんでした。でもね、それは私の父親もそうだったし、周りの男たちもそうでしたから。


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――奥様に愛想を尽かされた理由は何だったのですか。

 決定的な理由はなく、日々の積み重ねでした。もはや私と一緒にいること自体、嫌になったということ。私は愕然としました。どうにかして元さやに収まれないだろうか。悩み、考えて浮かんだのが、「愛の三原則」です。


全国の亭主たちよ、声に出して唱和しよう

 私の知人には離婚した人もいます。離婚後の彼は、身なりがどんどんみすぼらしくなりました。私はそんな風になりたくなかった。ごみ出しや風呂掃除をしながら、愛の三原則を誓って実行していたら、徐々に妻と会話をする時間が増えました。首の皮一枚でなんとか離婚を回避したのをきっかけに「これはいいばい」と、10人くらいの仲間うちで全国亭主関白協会をつくりました。


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隣の芝生が青く見えるSNS時代の恐怖

――それにしても、すごい団体名ですね。

 名称案には「愛妻家協会」とかもありましたが、かっこ悪いから。「亭主関白協会」は強権的な団体に聞こえるけど、実は妻の尻に敷かれっぱなしの団体というギャップが面白かったので。全国の亭主たちに啓蒙しようと冗談半分に付けた名前でしたが、今では会員が2万5000人に増えてびっくりです。


新亭主関白の兵法

――すごい数ですね。

 協会をつくって分かったのは、世の亭主たちのだいたい8割は、いつ離婚を突きつけられてもおかしくないという状況です。

――多いですね。夫婦関係に悩んで入会する人が多いのですか。

 会員には二通りいて、半分は冗談で入会する人。もう半分が本当に夫婦関係に困って、真剣にヒントを求めてやってくる人。「ありがとう」「ごめんなさい」とか、普段から言っておけば大丈夫なのに、世の亭主たちは知らんからさ。


浮気なんて、もってのほか!!

――全亭協のウェブサイトでできる「関白検定」をしてみました。二段でした。

 ほぅ、有段者。「段」の下には「級」がありますから。段位なら比較的尻に敷かれるすべを持っていますね。会長の私ですら、五段ですから。私の知る中に十段が2人います。男のプライドというか、五、六段くらいから上へはなかなか突き抜けられないんですよね。あなた、結婚してどれくらいですか。

――10年ちょっとです。

 現代のSNS社会は、亭主たちにとって非常に危険です。良い亭主と悪い亭主を簡単に比較できますから。気をつけてください。

――SNSを通じて他人の家庭環境が何となく垣間見えますからね。

 そうです。昔の専業主婦は社会から隔離されていたから、よその家庭もこんなもんだろうと、妻たちもあきらめていました。だが、だんだんと情報化が進んできた。


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変化する日本の夫婦関係

――この20年だと、女性の社会進出が進んで共働き家庭が主流になりました。


共働き等世帯の推移 「内閣府 男女共同参画白書 令和元年版」より

 社会に出たらばれるんですよ。優秀な男性や良い夫がいっぱいいますから。「それに比べてうちの亭主は……」となりますよね。

――価値観が多様化して、生涯未婚率は男女ともに上昇しています。

 分かります。選び始めたらきりがないというか。昔は結婚は勢いでしていたようなところもあります。現代社会において晩婚化は避けられませんね。

――「働き方改革」で休日が増えたのは夫婦にとっていいことですね。

 いやいや。ダメ亭主が家にいる時間が増えました。昔の休暇は盆暮れ正月くらいだったので、夫婦が一緒にいる時間は短かった。それでもすぐケンカになる。働き方改革で亭主が早く帰宅して、休みが多いとなると、夫婦でいる時間が長くなります。妻のイライラは増しますね。

――働き方改革が離婚率を上げる?

 大げさに言えば、温床になりうると思っています。毎週のようにケンカする夫婦なら息苦しいですよね。働き方改革はダメな亭主にとってデンジャラス。


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ボーっと亭主してるんじゃねーよ!


亭主の行動には「アウト」がいっぱい

――世の亭主たちはどうすれば?

 基本、妻は赤の他人なんですよ。忘れてはいけません。赤の他人です。夫婦になったからと言って、自分の所有物だと勘違いしてはいけません。赤の他人に「お茶っ!」とか命令しますか。妻は"上司"だと思え。上司にあれこれ指図しますか。それが分かると、夫婦円満の道筋が見えてきます。「それは僕がします」と言えます。「俺が食べさせてやっている」とか言語道断。何も考えず、ボーッと亭主をしていると危険ですよ。

――いわゆる昭和的な家族形態は亭主が仕事をし、妻が家庭を守る。「食べさせてやっている」は旧態依然とした家族観に理由がありそうです。

 亭主が変わらないと夫婦関係は何一つ変わらない。亭主が変わる以外に円満の道はない。どんなに悪い妻だと思っても、亭主よりはマシですから。ダメ亭主は、妻とまともに会話すらできない。夫は妻の主語や述語のない会話に我慢ができない。無駄な意見を言わず、「そうだね」「わかるよ」「その通り」だけでいいんです。聴くことに徹して、まずこのフレーズを心がけてください。


妻の話はとにかく聴くことが大事なのだ

――世の夫を代表して言いますけど、そうは言ってもしんどくないですか。

 「慣れ」です。こげん言うときつかろうけどさ、これは修業みたいな所もあって、70歳、80歳と老いていく中で、"かわいい亭主"を目指さなければならんの。妻の心を見る。言葉じゃなくて。どうして怒っているのだろうとか、少しずつ分かってきますから。私は悟りました。

――悟っちゃいましたか(笑)。会長は西野カナさんの「トリセツ」って曲、知ってます?

 もちろん。かわいい、いい曲じゃないですか。僕らの思想の神髄を歌っていると思っています。

――うん、確かに悟ってますね……


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サヨナラ、昭和の『九州男児』

――会長は福岡県久留米市の出身です。新亭主関白像はいわゆる「九州男児」とは真逆ですよね。

 一口で九州男児とくくるが、全国亭主関白協会でアンケートをとったら、福岡県と愛媛県の亭主が最も尻に敷かれているという結果が出ました。妻の手のひらの上で転がされているだけ。あくまでも我々の調査ですが、それが真実です。鹿児島など南九州地方だと昔ながらの亭主関白の傾向が少しはあるようですが、九州男児像は間違って植え付けられています。九州男児こそ尻に敷かれるのにふさわしい男たちなんだと、全亭協は誤解を解いて回っています。それが20年の研究の成果です。

――日本の家族もこの20年で大きく変わりました。虐待など家族関係に起因する社会問題も目立ちます。

 僕らは夫婦円満の家庭には虐待やいじめはないと思っています。子どもは両親の姿を見て育ちます。夫婦円満こそ社会の基軸で、日本の未来を明るくすると信じています。日本は子ども中心に家庭を考えすぎ。夫婦円満こそ家庭円満の秘訣です。だからこそ、世の亭主たちは"新亭主関白"になるべきなのです。



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