分身ロボットで社会とつながる 福岡に期間限定カフェが登場
記事 INDEX
- 自宅から遠隔操作で接客
- 誰もが働ける方法を研究
- 「寝たきりの先に行ける」
難病や重度の障害などをもつ人がロボットを遠隔から操作して接客にあたる「分身ロボットカフェ DAWN in Fukuoka」が、11月27日(日)まで西日本シティ銀行ココロ館(福岡市中央区)で開かれています。外出が困難な人が働ける社会の実現を、テクノロジーによって目指す取り組みを取材しました。
自宅から遠隔操作で接客
「どれがおすすめですか」
「味見したコスモドリアがとてもおいしかったですよ」
報道陣や関係者を対象に11月11日に開かれた体験会。席に着いた人は、卓上に置かれた小型の分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」と話しながら、注文するメニューを選びます。ロボットを操作するのは、研修を受けたパイロットと呼ばれる人たちです。自宅などの遠隔地から、パソコンなどを使って接客をしています。
注文を終えると、大型の「OriHime-D」がキッチンの方から出てきました。こちらは別のパイロットが操作しています。注文されたメニューをトレーに載せて移動し、「お待たせしました!」と明るい声でテーブルに届けます。
参加した福岡市職員の男性は「おすすめを聞いたり、会話を楽しみながら注文できました」と笑顔です。パイロットの一人、ことのはさんは「『OriHime』はどこにでも行け、どんなことでもできる可能性に満ちたロボットです。『OriHime』で働ける場所がもっともっと広がるように願っています」と話していました。
誰もが働ける方法を研究
カフェを手がけているのは、このロボットを開発したオリィ研究所(東京都)です。共同創設者で所長の吉藤オリィさんは、幼い頃に病気がちで、小学生から中学生の約3年半、学校に通えない時期があったといいます。みんなと同じ行事に参加できず、行きたい場所にも行けない――。「身体が二つ、三つあればいいのに」と思った経験が出発点となり、2010年に「OriHime」を完成させました。
その後、ものを持って移動できる「OriHime-D」も開発。これらのロボットを使って、就労をあきらめていた人が社会で働ける方法を研究しようと、18年に分身ロボットカフェをスタートしました。
21年6月には、東京・日本橋に常設の店舗をオープン。企業の受付、新型コロナの宿泊療養施設など導入事例も増え、パイロットは現在70人以上を数えるそうです。今回、この取り組みや理念を地方でも広めるため、全パイロットの1割が生活し、市役所などで「OriHime」の活用が進む福岡で、カフェを開催することになりました。
「寝たきりの先に行ける」
カフェでは、「ロイヤルホールディングス」が展開する軽食「ロイヤルデリ」をワンプレートで提供。パスタやカレー、ドリアなどをそろえています。
また、地元の特別支援学校6校から中高生9人を受け入れ、遠隔就労の体験プログラムを実施。日本橋の常設店で先輩パイロットと練習を重ね、14日から福岡でも接客のトレーニングを始めています。
福岡のオープニングセレモニーで登壇した吉藤さんは「人は死なない限り、いつかは寝たきりになります。様々な要因で回復が困難になった人たちは、我々の先輩と考えることもできます」と語りかけました。その上で、「カフェから様々なパイロットが生まれ、企業に就職して巣立っていく――。こういうモデルを全国に広げていきたいです。寝たきりの先に行けると私たちは本気で信じています」と力を込めました。
イベント名 | 分身ロボットカフェ DAWN in Fukuoka |
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開催場所 | 西日本シティ銀行ココロ館 ココロガーデン (福岡市中央区鳥飼2-1-11) |
開催期間 | 11月27日(日)まで |
開催時間 | 9:00~17:00 |
料金 | 税込み2000円 75分入れ替え制・食事とワンドリンク付き |
予約 | Webサイトで 当日予約は席に空きがある場合のみ電話(090-6944-0651)で受け付ける |