田川の廃校プールに「めだかのガッコウ」 愛好家が集う場に

小学校跡のプールを活用した「めだかのガッコウ」

記事 INDEX

  • 美しい姿に一目ぼれ
  • 愛好家と楽しい時間
  • 改良品種が次々登場

 〽めだかの学校は プールのなか――。福岡県田川市の多機能交流施設「いいかねPalette(パレット)」にあるメダカの養殖販売所「めだかのガッコウ」が注目されている。施設は2014年3月で廃校になった猪位金(いいかね)小学校の跡に整備され、めだかのガッコウはかつて児童たちの歓声が響いていたプールにできた。

美しい姿に一目ぼれ

 店長は、福岡県川崎町で建設業を営む菊池育伸(やすのぶ)さん(54)。メダカを育てるようになったきっかけは20年ほど前に遡る。地元の養殖場で見せてもらった「幹之(みゆき)メダカ」という品種に一目ぼれして「どはまりした」そうだ。


めだかのガッコウを管理している菊池さん

 太陽の光を受け、キラキラと泳ぐ幹之メダカの美しい姿。ずっと見ていても飽きなかった。価格は1匹1万円。1週間ほど悩んだ末、つがいを購入した。飼い始めると、稚魚が増えていき、水槽に新しい生命を見つけるたびにワクワクしたという。


背中が銀色に輝く幹之メダカ

 メダカが日々育ち、増えていくのが楽しみになった菊池さん。仕事を終えた夜、ベランダに置いた水槽をランプで照らし、酒をのみながらメダカを見て過ごすのが至福の時間となった。

 幹之メダカは、その後100匹ほどに増えた。愛着も湧いたため販売はせず、自分で観賞して楽しんだという。


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愛好家と楽しい時間

 ガッコウには、大分県や山口県などの隣県から愛好家が訪れる。プールサイドで、メダカ談議に花を咲かせたり、情報交換したりすることも楽しみの一つだ。


メダカ談議に花が咲く

 観察するほどに、独特なメダカの世界に引き込まれていくという菊池さん。「本業にするのは厳しいけれど、メダカを眺めながら愛好家と交流し、のんびり育てるには副業でちょうどいい」と笑顔を見せる。


美しいヒレを持つマリアージュキッシングワイドフィン

 プールサイドには大小約250個の水槽が並び、200種以上、1万匹を超えるメダカが泳ぐ。200円で買える品種から、美しいヒレが特徴で1匹3万5000円の「マリアージュキッシングワイドフィン」まで様々だ。


プールサイドに並ぶ水槽を管理する菊池さん

 当初は、空のプールの底に水槽を並べるつもりだったが、地元消防署から防火用水として利用したいとの要望があり、水を張ったままにしている。


大きな金魚がプールを悠々と泳いでいた

 深い緑色の水をたたえたプールは、自然に近い水辺環境が再現され、メダカや大型の金魚が悠々と泳いでいる。水中には微生物が豊富に存在し、魚たちは微生物を食べて生きているとのこと。そのためプールの水を自宅に持ち帰る愛好家も多いという。


周囲を山に囲まれた「めだかのガッコウ」

 周囲を山に囲まれ、風雨にさらされながら育つメダカ。購入客からは「ここのメダカは強いね」と喜ばれるそうだ。冬場は日曜のみ客を迎え、春から秋にかけては水曜を除いて営業している。

改良品種が次々登場

 コロナ禍で在宅時間が長くなり、熱帯魚よりも手軽に飼育できるメダカの人気は高まっている。一方で、日本古来のメダカは、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧種に挙げられている。

 愛好家でつくる「日本メダカ協会」(広島県廿日市市)によると、メダカは雌雄を同じ水槽で飼うだけで交配させられるなど種の改良が容易。この5、6年で「改良メダカ」の人気がSNSなどによって急上昇し、カラフルなものやキラキラ光るものなど様々な品種が次々と登場している。


色彩豊かな品種「月下美人」

 20年ほど前までは20種程度しか手に入らなかったが、現在は700種以上に増えたそうだ。中には1匹100万円の高値で取引された改良メダカもあるという。


ガッコウ入り口に愛好家らが貼ったステッカー


 ところで、ガッコウのメダカたちは「みんなでおゆうぎ」しているのだろうか。着飾ったように色鮮やかなもの、ラメが入ったものなど個性豊かなメダカたち。水槽で泳ぐ姿を、「そーっとのぞいて」みる。


 〽だれが生徒か先生か――。見れば見るほど、見分けがつかなくなった。


メダカをスローシャッターで撮影すると、なめらかな白線模様を描いた



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