本家に負けじ!元気に水を吐く狛犬 田川の「ターライオン」
記事 INDEX
- SNSでじわり注目
- 愛されキャラに!
- 土日に会いに来て
福岡県田川市の彦山川に架かる橋の上で、勢いよく口から水を吐き出す一対の狛犬(こまいぬ)――。まるでシンガポールの観光名所・マーライオン像のようだ。
SNSでじわり注目
毎年5月に行われる「川渡り神幸祭(じんこうさい)」では、色鮮やかな飾りをつけた山笠が勇壮に川を渡る。
狛犬をイメージしたモニュメントは、祭りの会場そばの新橋に設置されている。勢いよく水を放つ姿が「マーライオン像にそっくり」と、ひそかに話題となっている。
高さ170センチのモニュメントは、田川商工会議所が創立70周年を記念して2016年に制作し、市に寄贈した。「神幸祭のシンボルがあればおもしろい」と、マーライオン像をヒントに作られたという。
彦山川の水をくみ上げて口から吐き出す狛犬。「意外と迫力あるね」「水の量がすごい」との声が上がる一方で、「田川になんでこんなものが?」「マーライオンのパクリやん」といった意見も見受けられる。
設置から6年が過ぎ、SNSや口コミで話題がじわじわ広がっている。”辛口”のコメントも含め、「うまくいじってもらえている」と市の担当者。「話題になるのはありがたいこと。注目され、見に来てもらうのは目的の一つですから」
SNSなどで知った北九州市や福岡市の住民から「行ってみたい」「どこにあるの?」といった問い合わせが、田川市に度々寄せられるようになったそうだ。
愛されキャラに!
市民に愛され、時にいじられる狛犬だが、正式には「彦山川噴水モニュメント」という少々お堅い名前が付いている。実は、市が愛称を公募したものの、認知度がまだ低かったためか応募が10件にも満たず、愛称決定が見送られた経緯がある。
とはいえ正式名称が定着することもなく、SNSでは「田川にあるマーライオン」ということから「ターライオン」と呼ばれるように。ほかにも「コマーライオン」「狛犬シャワー」といった呼び名もあるようだ。Googleマップでは、「田川のマーライオン」「田川だけにTa‐raionn」と表記されている。
かつて公募でつまずいた田川市も「地元の人たちが愛称で呼んでくれるようになり、それが根付いていくのが一番ありがたい」と話す。
土日に会いに来て
渡り鳥が川面をのんびり泳ぎ、羽を休める新橋の周辺。狛犬をよく観察してみると、像は人の大きさほどもあり、「ゴーッ」という重低音とともに吐き出される水の勢いは想像以上の迫力だ。
川が汚れていると管がごみで詰まり、放水も止まってしまうという。当初は環境保護の願いも込められたというモニュメント。今では、近隣住民の「愛されキャラ」としてすっかり定着したようだ。
一度だけシンガポールのマーライオンを見たことがある。大勢の観光客が像を取り囲むようにして楽しんでいるのが印象的だった。一方、休日の午後に訪ねたターライオン。人のにぎわいは本家に遠く及ばないが、スポットライトを浴びている夜の姿は、孤高の獅子のイメージに重なった。
国際的な観光都市と、人口5万に満たない九州の地方都市――。それぞれの規模や条件を考えれば、ターライオンは十分に健闘しているのでは? いや負けてないかも?
ひいきが過ぎるとは分かりつつ、いつの間にかターライオンに親近感を抱き、ひそかに応援している自分に気づいた。
ターライオンの放水は土曜・日曜の11時から19時まで。日没から21時までライトアップされている。