石段を照らす灯籠と夜景の共演 久留米市の高良大社で献灯祭

灯籠に明かりがともった高良大社から望む久留米市街地

記事 INDEX

  • SNSでも話題!
  • 圧巻のパノラマ
  • 絶景を思い出に

 福岡県久留米市の高良大社で、夏の風物詩「献灯祭」(8月1~31日)が行われ、灯籠の柔らかな明かりが石段を照らしている。真っすぐに延びる石段と、夕日の沈む方角が重なるシーズンでもあり、SNSでは「絶景」「今までに見た神社の風景でNO.1」といった言葉も飛び交う。夕日と夜景と灯籠が織りなすスペクタクルを見に出かけた。

SNSでも話題!


高良山の8合目付近にある高良大社


 高良大社は、久留米市からうきは市にかけて稜線(りょうせん)を描く耳納連山の西端・高良山(312メートル)の中腹に位置する。約1600年前に創建された筑後国一の宮で、国の重要文化財に指定されている社殿は、神社建築としては九州最大級だ。


高良大社奥の院へ続く、杉林に囲まれた遊歩道


 古くから九州の交通・文化・政治の要衝で、戦国時代には多くの山城が築かれた高良山。現在は、山頂や高良大社奥の院などに続く自然遊歩道が整備され、麓から続く竹林や、四季折々に表情をかえる豊かな自然が市民らに親しまれている。


8月末まで献灯祭が行われる高良大社


 高良大社のシンボル的存在でもある131段の石段。神職によると、150あまりある灯籠は半世紀以上前から設置されているという。日没前から23時頃まで灯籠に明かりがともり、カップルをはじめ多くの人がカメラを手に訪れる。「おそらくSNSの影響でしょう。この時期、夕暮れ時の参拝者が明らかに増えました」とのことだ。



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圧巻のパノラマ


 まだ日差しが強い時間帯に神社に着くと、境内の人影はまばらだった。石段の上からは、筑後平野を蛇行して流れる筑後川が遠くに見えた。空気が澄んでいる時には、長崎県の多良岳も望めるという。


石段からは久留米市街地が一望できる


 日没が近づいてくると、石段の灯籠がともり始めた。脊振山系の山々の上空に、オレンジや黄色、青など幾層もの光のグラデーションが描かれていた。その時を待っていたかのように、スマートフォンやカメラを手にした人たちが、手すりを頼りに石段を上ってくるのが見えた。


夕暮れ、石段をゆっくり上る人の姿が鳥居の隙間から見えた


 酷暑の中、一段ずつ歩を進め、上ってきた坂を振り返った瞬間、それまでの疲れが吹き飛ぶようなパノラマが目の前に広がる。「おー、すごい」。ため息にも似た声が聞こえた。沈みゆく夕日を立ち止まって見守る人たちの影が長く伸びていた。


市街地の先に沈む夕日を見つめる人たち


 視界を遮る木々が少なく、石段そばにある展望所からは、長崎県や朝倉市の山々まで遠く見渡せた。眼下には九州自動車道を走る車のライトがS字形の曲線を描く。日が傾くにつれ、筑後平野に広がる街並みの表情も刻々と変化していく。


展望所の間近に見える九州自動車道


 日没から20分ほどたつと、三日月の下に、きらめくような街の光が遠くまで広がっていた。灯籠と街明かりの共演。二つの”主役”による光の演出は、噂(うわさ)に聞いた通り圧巻の光景だった。


高良大社石段からの絶景


 石段の上、特に手すりが設けられた中央付近が最も”絵になる”スポットだ。集まった人たちの狙いは同じ。自分が撮ったら、次の人に場所を譲る――。知らない人同士が“秩序”を保ちながら、それぞれに絶景を楽しんでいた。


絶景を思い出に

 20時頃になると夜の闇は深くなり、灯籠の存在感が増していく。石段の途中では、灯籠と街明かりを背景に、友人らと記念写真を撮影しようとする人が増えてきた。しかし思い通りに撮れず、「顔が真っ暗になってしまう」と戸惑う声も聞こえてくる。


石段の中央部から絶景を写真に


 スマホのライトを使うか、灯籠に近づけば表情も分かるように撮れるのだが……。声をかけようかと悩んだが、くつろいでいる時間を邪魔するのも申し訳ない気がして、思いとどまった。


宝石をちりばめたかのような展望所からの眺望


 日没から1時間を過ぎると、境内の人影はほとんどなくなった。市街地まで下りて山を振り返ると、大きな鳥居が光っているように見えた。鳥居のライトアップ? 神職に尋ねると、献灯祭の間は、境内の建物に鳥居の形をした電飾を施しているのだという。最後に、その「鳥居を模した光」をカメラに収めて家路についた。


一の鳥居の先に見える鳥居を模した電飾


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